2018年“深”

あけましておめでとうございます。いつの間にやら2018年です。

新年といえば、学生最後の一年だった2006年から続けている今年の一文字。凛→彩→道→生→創→挑→感→編→磨→理→繋と途切れずに続き、2017年は「響(ひびき)」の一文字を胸に過ごしました。

2014年のがん闘病を経てゼロからの再スタート。もう一度自分なりの「理(ことわり)」をもって生きようと、“記憶”にまつわる制作を続けた2015年。2015年に生まれた制作物や縁を「繋(つなぐ)」を胸に、日本のあちこちへ取材旅へ出かけた2016年。そしてより手にとった人の心に響くものをつくりたい、誰かと一緒に創作するような試みも挑戦したいと「響(ひびき)」の一文字を胸に新しいことにもチャレンジした2017年。

「まなざしを綴じる」という、病の経験とZINEでの表現についての連載の機会をいただいたり。がん経験者としてworld cancer dayに合わせた写真展に参加したり。雑誌『HUG』のインタビューを受けたり。寄稿したり、テレビの帯番組でもご紹介いただいたり。がんについての記憶を詩にした豆本詩集『汀の虹』を制作し、売上をがん経験者のサポートを続けるNPO法人へ寄付する活動をはじめたり。“病”や“記憶”をテーマに他職種の方との対話や制作も経験したり。

何よりも大きな変化は、秋から大阪府のがん診療拠点病院で、がん患者サロンのボランティアをはじめたことでした。治療中の自分が一番孤独を感じた“病院”という場所に再び身を置き、訪れた人の声を受け止める。それができるようになったのは闘病からこの3年間、わたしのことばにならない想いに耳を傾け、気持ちの整理に伴走してくれたたくさんの人たちと過ごした時間があってこそです。その有り難さを感じながら、患者でも家族でも医療者でもなく、その場に居て見えるもの、聴こえてくるもの、感じることをしっかりと受け止め、出会いの中で日々大切なことを教わっています。

“恩返し”にはほど遠いささやかな活動ですが、“がん経験者としてのわたし ”にお声がけいただいたり、“がん経験があったからこそできた”ことが増えた2017年。たくさんの“響”があった1年でした。

そして2018年は“深(ふかめる)”。

「深」〈シン〉
1 水がふかい
2 奥ふかい
3 程度がふかい
4 夜がふかまる
(デジタル大辞泉)

同じ経験をした人だからこそ共にできるもの、経験を共にしていない人とも交わしてゆけるものを深める。よりいっそう一人ひとりが抱えているものへの理解を深め、表現を深め、そしてより深いところに届く活動へと育んでいきたい。

そのためにも、病院という場に居ること。一方で病気になる前の人が訪れるような暮らしの空間にも居て、本を並べて出会い続けること。素直に静かに、本を通した対面の関係でできることを積み重ね、深めていきたいなと思います。

まずは1月に緑地公園のblackbird booksさんではじまる展示「汀の虹」から。本と花を大切にされ、また大切に思う人たちが集まる空間でどんなことができるだろうかとワクワクしながら準備を進めています。家からも近い縁のあるお店。なるべく在廊して、お店に流れる空気や来てくださる方々の声に触れ、本を手渡していけたらと思います。他にもたのしみなこともたくさんありますが、一つひとつ、一歩ずつ。まずはblackbird booksさんでお待ちしています。

皆さまにとってもよき1年になりますように。今年もよろしくお願いいたします。

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