2016-03-08

【Interview】NPO法人 美・JAPONデザイナー 小林栄子さん (1/5)

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四季の美しさや移いゆく儚さに情緒を感じる日本人の心と、職人たちの覚悟と手仕事の技から生まれ、時代を超え大切に着継がれてきたアンティーク着物を「想い出を纏うコスチューム」として創作ドレスに生まれ変わらせ、世界各国で日本文化を伝える公演を行っているNPO法人 美・JAPON理事長  デザイナーの小林栄子さん。「日本文化を伝えたい」という想いのもと、様々なアーティストと共に創作活動を続ける小林さんの“想い”に惹かれて、東京の麻布十番にあるアトリエへお伺いしました。

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── 先日いただいたパンフレットに添えられていた 「想い出を纏うコスチューム」という言葉にとても惹かれるものがあり、ぜひ詳しくお話を聴きしたいなと感じて伺いました。まずは創作の原点とおっしゃっていたおばあさまが遺された着物のお話からお伺いできますか?

小林:祖母が他界したのは23年前のことですね。祖母が遺した着物がたくさんあって、着る人もいないから処分すると母が言うので、大好きな祖母の形見だからと仙台から送ってもらうと非常に大量で。その着物から巾着や鞄、スカーフを創り、3年ほど個展で販売を続けていました。そうしてアンティークの着物に触れるうちに職人の細やかな手仕事の技、着物のことをもっと知りたくなり京都へ通うようになりました。京都という街は、長い歴史の中でお姫様から芸者さんまで暮らしていた街ですから、柄も色も様々な着物が眠っていてどんどんと着物に魅せられていきましたね。

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── それがファッションショーという活動まで広がっていったきっかけはいつ頃でしょうか?  
小林:元々はファッションデザイナーで、子どもを産んでからは主婦業を優先しながらフリーランスで雑誌のスタイリストをしていました。その縁から地域の主婦の方々と、仕事で知り合ったプロの方にも声をかけて「箪笥に眠ったままの洋服に光を当てる」というテーマでファッションショーを開催するようになり、毎年継続して開催するうちに主婦という枠も超えて広がり続け、2004年にアジアの風21という組織になり「天空」というステージがはじまりました。

── アマチュアとプロが共に舞台を創り上げるという、今の美・JAPONの出発点ということですね。
小林:そうですね。とにかく協力しあって、お互いが持っていないものを出し合うことを目指したいと。たとえば、アマチュアの方は様々なことをきちんと受け止めながら自分の可能性を試したいと、前向きに挑戦する姿勢に力をいただくことが多いですね。この活動を通してプロになられた方もたくさんいらっしゃいます。プロフェッショナルで想いに共感して力を貸してくださる方は、さすが皆さん本質が分かっていらっしゃるというか、多くを語らずとも素晴らしいパフォーマンスをしてくださる。そういう方たちがプロ・アマの垣根を超えて1つに集まると、ものすごく面白いことができるんです。根底にあるのは「和を以て貴しとなす」自分だけ良ければいいというのではない、日本人の心というか美意識で成り立っているなと私は感じています。

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── 想いだけで繋がり、続いている活動ということですね。とはいえ皆さんボランティアで活動を続けていらっしゃるのは大変なことだとも思うのですが。
小林:ドレスを売って儲けるためのショーではないので経費を確保するのも難しいのが正直なところで、活動を継続するのは大変だなと感じることもあります。しかし、どのドレスも世界中でここにしかない、日本の文化財をお預かりして創ったものですから勝手には売ることはできませんよね。このドレスに込められている日本の職人の技や日本人の心を伝えたいという一点が私の大切にしている想いでもあり、美・JAPONの活動の軸でもあります。ショーを通して、世界中の方に日本の文化を感じて欲しい。この純粋な想いだけで成り立っているのが私たちらしさであり、これから先も変わらないですね。

── それが「想い出を纏うコスチューム」という言葉に繋がってくるのですね。特に海外の方に伝えるにあたって「纏う」という言葉を、翻訳してお伝えするのは難しそうですね。この着物に宿る作り手の技術や、着てきた先人たちの想いを担うというか引き継ぐという意味が込められている気がします。
小林:そのとおりで、ただ「モノ」を見せているのではないというところを大切にしているのですが、伝えること、特に翻訳にはいつも苦労しますね。言葉と文化の壁もありますし、ショーというものも30分程度のほんの一瞬の時間で、台詞もない舞台ですからすべてをお伝えするのは難しいのです。それもあって、ベルギー公演からは、パンフレットに想いを載せたり、ナレーションを入れたりすることで、より深く日本文化を感じていただけるような試みをしていく予定です。

- 今までの海外公演を通して、感じられたことはありますか?
小林:2005年からルクセンブルク、ネパール、トルコ、イタリア、クウェート、フランス、スイス、ポルトガル、アメリカと公演を続けて、何よりも一番感じるのは世界の移り変わりですね。例えば2006年に公演をしたネパールでは、その2年後に王族の殺害事件が起きて王政が廃止されたり、地震などの自然災害も含めて変化というものは避けられない。せめて見届けなきゃいけないという気持ちはどこかにあって、だからこそ「続ける」ということにはこだわっています。

Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)

【Interview】NPO法人 美・JAPONデザイナー 小林栄子さん (2/5)  #2おばあさまの花嫁衣裳

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michi-siruve (みちしるべ)
“記憶”を綴じるZINE作家。「掌の記憶」を綴じながら、日本のまちを巡っています。>>詳しくはこちら
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