2016-03-08

【Interview】NPO法人 美・JAPONデザイナー 小林栄子さん (2/5)

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四季の美しさや移いゆく儚さに情緒を感じる日本人の心と、職人たちの覚悟と手仕事の技から生まれ、時代を超え大切に着継がれてきたアンティーク着物を「想い出を纏うコスチューム」として創作ドレスに生まれ変わらせ、世界各国で日本文化を伝える公演を行っているNPO法人 美・JAPON理事長  デザイナーの小林栄子さん。「日本文化を伝えたい」という想いのもと、様々なアーティストと共に創作活動を続ける小林さんの“想い”に惹かれて、東京の麻布十番にあるアトリエへお伺いしました。

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- 次にそれぞれのドレスに込められた想いをお伺いできますか?
小林:まずはこのドレスですね。美・JAPONのドレスの中で一番様々な国のモデルさんが纏ったドレスです。海外公演で「どの衣裳を着たい?」と尋ねるとなぜか一番人気で、イスタンブール公演ではトルコの女優さん、ルクセンブルク公演ではベルギーのアントワーク芸術学院の生徒さん、ニューヨーク公演ではニューヨークのモデルさんが着てくださいました。

- 鶴に松竹梅、おめでたい柄が溢れた華やかな衣装ですね。これはいつの時代の着物で、どのようなご縁でここにあるのでしょうか?
小林:元々は祖母の着物を譲り受けたのがアンティーク着物との出会いでしたが、その後に実家のある宮城県の知り合いも回りきった時に「山形に行けばあるんじゃないかしら?」という話になってね。山形は豪農で裕福なお家があるだろうから、そういった地域にはまだアンティークの着物が眠っているんじゃないかと。そして山形の知り合いを頼りに着物を探し訪ねた際、ご紹介いただいた方から譲り受けたのがこの着物です。手紡ぎの糸を手織りして作られた約150年前の花嫁衣裳で、今は亡きおばあさまがご自身の花嫁衣装にするために約1年かけて作られた振袖が残っていたのです。

- おばあさまの花嫁衣裳と知っただけで、不思議とぐっと身近なものに感じます。
小林:そうでしょう。鮮やかな紫色の総柄で鶴、松竹梅とハレの日にふさわしい柄が大胆に描かれている振袖で、あまりに華やかなので今では中々着る機会がなくて、お孫さんも一度しか着ていないとおっしゃっていたんです。けれどもご家族の想い出の詰まった大切な着物だということで、それを譲っていただいたというか、文化財としてお預かりしてる感覚でドレスに生まれ変わらせて、ショーを通して海外に伝えています。公演が終わった後にこのドレスの大きな写真をお贈りしたら、すごく気に入って額に入れてご自宅に飾ってくださっているそうなんです。

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- 山形のお宅に眠っていた着物が世界中を周って、想いが巡っているというのは素晴らしいですね。この着物をドレスにデザインするにあたり、大切にされたことはどのようなことでしょうか?
小林:この着物に限らず、ドレスにデザインする際はよりエレガントに、つまりはより自然に体に馴染むフォルムに変えるという点を一番大切しています。可能な限り着物の持つ生地や柄の流れを生かしたいので、できるだけ縦に接いで柄合わせをする。着るという前提で最低限必要なものだけを残して、ただ羽織るだけで着こなせるものは手を加えずそのまま羽織っている作品もあります。着物として着ると、どうしても帯で束ねるということが必要になって、帯を境に流れが断たれてしまうでしょう。ドレスだからこそ、着物本来の流れが表現できるんじゃないかなとも思うのです。

- 着物の持つ「流れ」を生かすという表現がとても新鮮です。
小林:「流れ」が着物の本質というか、流れが生きると着物がよりエレガントになる。この着物もとても華やかな柄と鮮やかな色遣いだけれども、決してうるさくはない品格を持っていて、それが日本の着物の美意識だと感じます。だから「流れ」というのは、どんな時も一番大切にしていますね。

Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)

【Interview】NPO法人 美・JAPONデザイナー 小林栄子さん (3/5)  #3 時代の流れを生かす

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michi-siruve (みちしるべ)
“記憶”を綴じるZINE作家。「掌の記憶」を綴じながら、日本のまちを巡っています。>>詳しくはこちら
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