2016-03-09

【Interview】NPO法人 美・JAPONデザイナー 小林栄子さん (3/5)

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四季の美しさや移いゆく儚さに情緒を感じる日本人の心と、職人たちの覚悟と手仕事の技から生まれ、時代を超え大切に着継がれてきたアンティーク着物を「想い出を纏うコスチューム」として創作ドレスに生まれ変わらせ、世界各国で日本文化を伝える公演を行っているNPO法人 美・JAPON  理事長  デザイナーの小林栄子さん。「日本文化を伝えたい」という想いのもと、様々なアーティストと共に創作活動を続ける小林さんの“想い”に惹かれて、東京の麻布十番にあるアトリエへお伺いしました。

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- これは絽ですね。
小林:縦絽という珍しいもので、非常に細い生糸を使った手織りです。本当にふわっと柔らかくて、向こう側が透けて見えるくらい軽やかな生地でしょう。このドレスも「流れのまま」ということを大切にしました。

- 実際に身に纏うともっと感じるのでしょうね。これはどこで出会った着物でしょうか?
小林:これは京都に行った時にどこかの神社の露店で偶然見つけたものです。明治の後期の、まさに掘り出し物ですね。水仙が手書きで、古典的な波柄とあわせて意外とモダンに描かれているのがこの着物の魅力。明治の洒落物は大胆な柄は少なくて、紫も青に近いこっくりとした深みのある紫を使っていらっしゃるのね。品格と見た目の端正さというか、ある意味厳格さが残っている。これが大正になると赤紫系が増えて、色をぼかして染めた段染めや、柄もうんと豊富で大胆ないわゆる大正ロマンになるという具合に、柄行きや色遣いからも時代の薫りも感じますね。

- 時代の流れがデザインにも反映されているのですね。この水仙が上下に描かれているのは水面のイメージでしょうか?
小林:おそらく水面ですね、着物ではちょうど肩線だったのだけれど、ドレスはそれを無視して作らないと生地がとれないので、バランスをみながら作りました。

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- 絽の着物をドレスにする上で大切にされたことはありますか?
小林:絽は透けるのでドレスにするには裏が必要なんですね。でも素材感を生かすために裏地はつけずに、ショーの際は中にキャミソールを1枚着てもらっています。ストールはグリーンのちりめんの帯あげを裏地にして、紫とグリーンでイタリアやフランスの取り合わせの色を入れています。イメージは鹿鳴館の時代ね。

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小林:時代の繋がりでいくと、この古代紫の着物も明治時代の女性ものです。表は花紋といって、家紋ではない遊びの紋なのね。裾にも刺繍があって、さりげなく刺繍しているだけなのが明治。江戸末期から明治にかけてというのは、まだどことなく武家の薫りがしますね。もう一つこの時代で注目するのは羽裏、趣向を凝らしたものが多く、特に男性ものには素晴らしいものが多いです。

- その、羽裏に凝った心というのはどんなものなのでしょう?
小林:それは哲学があった訳ではなくて、いやおうなしにそうしなくてはいけなかった。幕末に派手なものは着てはいけませんとお触れが出たのね。で、見えないところなら良いだろうと裏地に凝ったという、これも時代の流れですね。

- その時代の流れにある意味沿いながらも個性を楽しんでいた表現が、今こうして残っているということですね。この羽織はもうそのままというか、何も手を加えないものを羽織っていらっしゃったんですね。
小林:
そう、ただ羽織るだけでもどんなに美しいかというのを見てもらいたかったの。これが日本の着物なんですよって。

Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)

【Interview】NPO法人 美・JAPONデザイナー 小林栄子さん (4/5)  #4 布地の流れを創る

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michi-siruve (みちしるべ)
“記憶”を綴じるZINE作家。「掌の記憶」を綴じながら、日本のまちを巡っています。>>詳しくはこちら
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