2017-01-08

マギーズ東京 – 自分を取り戻す居場所 –

がんであってもなくても、自分らしく生きる

向き合える、落ち着ける、優しくなれる  私の居場所

(『HUG(ハグ)』maggie’s tokyoオープン記念号より)

 

2017年1月7日、マギーズ東京で開催されたがん経験者の方々の集い「New year’s tea party for survivors」に参加しました。

その日のことを綴る前に、今回マギーズ東京を訪れた理由でもある闘病経験について改めて触れると、私は2014年のはじめ、29歳の終わりに絨毛がんという珍しいがんを患いました。婦人科系のがんでは最も悪性度が高く転移も早いと言われていて、昔は治療の難しいがんだったそうです。

今は抗がん剤での治療が確立され寛解・治癒率はかなり高いものの、心の準備も出来ないまま倒れて手術翌日から抗がん剤治療。何とか耐えるだけで必死の日々でした。結局入院治療中に病理検査で絨毛がんの結果が出たと告げられ仕事も辞め、それまで走り続けていた人生がぷっつりと途切れてベッドに横たわる日々。闘病中は家族にも友人にも本当に支えてもらったのですが「妊娠(正確には異常妊娠)」という出来事をはじまりにあっという間に心身ともに転がり落ちたこのがんは相当に堪えるものがあって。同時期に祖母を亡くしたこともあり「自分が生きるしかない」と黙々と治療を受け、心の底に抱えた本当の意味での不安や哀しみ、辛さや葛藤の大半は、家族にも友人にも伝えることができないままが時が過ぎていました。

がんは寛解したものの「寛解する」という目標だけを目指した治療期間、そして「再発しない」という目標だけを目指した寛解後1年が過ぎると、それまで押し込めていた感情が滲み出して苦しむようになりました。寛解した今の自分が相談するあてもなく、以前のようにともがく日々。でも心身それぞれに昔の自分のようには戻ることができず、同じ病気を患った人や同年代のがん経験者の方と出会うこともなく、病院の忙しさを察すると治療に直結する問題以外は伝えることもできず、時間が経つほどにどうしようもない想いがつのる状況でした。

そんな時に知ったのが、2016年秋に豊洲にオープンしたマギーズ東京の存在。がんの闘病中に限らず、経験者でも家族でも予約なしで気軽に訪れ、専門スタッフの方々に相談をしながら過ごすことができる場だと知り、闘病後の不安を抱えたままの自分が、まさに必要としていた場でした。

「がんで見失いそうな自分を取り戻す居場所」

マギーズ東京のリーフレットに添えられた言葉。がんを境にそれまでの自分と後の自分がぷっつり切れてしまい、振りきるようにZINE作家として本を綴じる活動や仕事を積み重ねていた自分にとって、一人の人間としての“自分”というものはどこかに置いてきてしまったところがあって。その自分を取り戻すことが今必要なことなのだと、その言葉でやっと気づかされました。

実際にマギーズ東京を訪れると、本当にゆったりとした場の空気とスタッフの皆さん一人ひとりのあたたかさに包まれて、それだけで涙が出そうになる居場所。ただ居ることが許されるその空間に身を置くと、皆さんそれぞれが心の奥の方につっかえていた言葉を一言、また一言こぼしていく。その言葉をそっと受け止めてくださるプロフェッショナルの志と優しさがそこにはありました。その日はがん経験者の皆さんの集いということもあり同年代の経験者の方々との出会いもたくさんあって、闘病前後の当事者ならではの悩みを共有したり、闘病経験をきっかけに自分の道を進む方々に力をもらったり。冒頭の写真におさめた『HUG』や『STAND UP!!』をはじめとして、がんにまつわる情報や経験者の方々の記事が掲載された冊子もたくさんありました。たった数時間のことですが、同じ痛みを共有する人と出会う中で、様々な人の人生に触れるうちに今までの孤独な時間や押し込めていたものがすーっと溶けていったほど。やっと前向きに生きていこうと、これからのためにその作業を始められる気がします。

大阪で一人抱え込んでいた私がここに来るきっかけとなった、マギーズ東京共同代表の鈴木美穂さんともお話しすることができたのも勇気をもらった出会い。同年代の女性で同じように20代で女性特有のがんで闘病を経験され、その時の想いを原動力にがんを経験をされた方々が自分を取り戻して生きていけるようにと様々な活動をされている美穂さん。その記事を読んでマギーズ東京の存在を詳しく知ったのですが、同じ場に集い“出会えた”ということがこんなにも力をもらえるんだと改めて実感しました。がん経験者による企画にも参加する機会をいただき、新しい一歩が踏み出せそうな予感です。何だかまとまりのない記事ですが、私はマギーズ東京に行けて本当に良かったです。そして、がんという経験の中で何か重なるものがある方がいらっしゃった時、またご家族やご友人でも、ひとつの選択肢として出会いのきっかけになればいいなと思いここに記します。2017年のはじめに一歩踏み出すことができて、本当によかった。

最後にマギーズ東京からの夕景を。いつもの日常から離れた特別な場でありながら、ちゃんとそれぞれの日常とつながっていて、そっと背中を押してもらって戻るべき場所への一歩を踏み出す。この夕景を眺めながらそんな風に感じました。1月7日にここで出会った皆さん、本当にありがとうございました。今日いただいた力を、次は別の誰かにつなぎます。

マギーズ東京Webサイト

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michi-siruve (みちしるべ)

ZINE作家。“記憶”を小さな本に綴じています。「掌の記憶」豆本詩集『汀の虹』など。>>詳しくはこちら

Exhibition

2017  zine it! vol.8 (11/23) 三条富小路書店(12/5-17)
2018 『汀の虹』展示 @blackbird books (1/16-28)

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