『PERSPECTIVE –from an oblique-』

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とても冷え込んだ2月10日の金曜日の夜、緑地公園にあるblackbird booksさんでひらかれた本をつくるひと vol.2『老いの現在を知るために』-PERSPECTIVE from an oblique- 創刊記念トークイベントと資料展示を聴きにいきました。

私がblackbird booksさんで『PERSPECTIVE –from an oblique-』を手にとったのは、2016年末のこと。人の心と体にあまりにも密接にある“老い”という主題に対して、確かな距離感を持って編集されたその本に、引き込まれずにはいられませんでした。

綴られた言葉には、書き手の主観との距離のとり方にとても細やかな配慮があって、ずっしりと重みのある内容でありながら、読み手が息を継ぐための適切な余白をもって編まれている。語りきれないことは絵や写真に込められていて、とても美しく、静かで、それでいて心の深いところまで届く強さを感じました。そしてこの本の編集者、studio-kawataの川那辺伸吾さんが介護の現場で専門職として働いていらっしゃる方だと知り、「福祉」と「本」という自分の活動との接点も感じ、お話を聴きにいきました。

日本の“老い”の歴史、介護する側とされる側の間とその周辺に横たわるものがぎゅっと詰まった01号。とても大きなテーマですが、この本からは“普遍的な感覚”と“変化の足跡”の両極が、今という時代と確かに繋がりながら目の前に立ち上がってきます。その理由は、今という時代を生き、介護の現場と向き合い続けている川那辺さんが編まれたからこそなのだと、トークをお聴きしていて改めて感じました。

誰しもがいつかは向き合わねばならない“老い”や“死”というものを、自分のまなざしをもって見つめる。とても身近なことでありながら、それをしっかりと見つめ、語り、語り合うということを難しく感じている人は少なからずいらっしゃるのではないかと思います。自ら一歩踏み出すきっかけを作ることが難しくても、人と人の間にこの本があることで、呼び水のように湧き上がってくるものがたくさんあるのではないかと、これから先この本から生まれ、広がるものがとても楽しみです。

初回トークイベントの参加者の方から「なぜ本なのか?」と問われ、まだ答えを探しているとおっしゃっていた川那辺さん。私も昨年からそのことを問われる機会があって、中々言葉にすることが難しく「本が抱くもの」や「喪失と隔たり」など答えを探しながらずっと思いを巡らせているのですが。

本の綴じ手の視点であれば、綴じること自体で自分との間に適切な距離をもつことができる。読み手の視点でも、適切な距離で綴じられた本を手にとることで、一定の距離を保って、時間をかけて向き合うことができる。その点でも本というかたちは“生きる”ということを見つめるにはとても良いかたちのように思います。手元に置き、何度も手にとる中で自分自身の変化に気づいたり、同じ本を手にとった人との違いに気づいたり、一冊の本があるからこそ感じとることができることもたくさんある。本って深いな、面白いなと改めて気づきをいただきました。

とりとめのない文章ですが、昨晩感じたこととして。blackbird booksの吉川さん、studio-kawataの川那辺さん、新たな気づきをありがとうございました。進んだり戻ったりと本と向き合いながら、次号もたのしみにしています。

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