【Interview】陶芸家 佐藤陽介さん (2/3)

journey01_07

見通しが良い縁起物の「れんこん」モチーフを中心に、陶のうつわやアクセサリーを制作されている陶芸家の佐藤陽介さん。陶芸家として歩んできた道のりや創作への想いをお聴きしようと、兵庫県三木市にある工房へお伺いしました。

journey01_08

#2 料理が思い浮かぶうつわ

── 次に創作への想い、まずは「れんこん」作品の生まれたきっかけやこだわりについてお聴かせください。

佐藤:思い返すとれんこんには元々魅力を感じていたんです。持ちやすいマグカップを作りたいなという想いが漠然とあって、調理中にれんこんを切っていた時に、これを持ち手につけたら面白いかなと試しでつけたことが最初で、裏にもれんこんを掘り、ソーサーにも穴をあけるともっと面白くなり、色々なものをれんこんで作るという流れが生まれました。

作品として並べると「え、結構みんなれんこん好きやったんかな?」という感じで。改めて意識すると料理本にも大抵れんこんが載っていて、絵になるというか。気づいていないけれど、縁の下の力持ち。そんなれんこんの良さや面白さ、可能性を感じてもらえるようなものを作りたいなと思いますね。穴も1つ1つ手作業であけているので違ってきますね。

journey01_03

── 1つ1つ違っていて愛嬌がありますよね。お料理はお好きですか?

佐藤:お酒を呑むのが好きで、よく自分で肴を作ったりしますね。高校生の時からお腹が減ると美味しいものが食べたいという感覚で、冷蔵庫を開けて野菜炒めを作ってご飯の上にのせたり。食べることは自分にとってすごく大切で、大きな割合を占めているかもしれません。

── 実は佐藤さんの深皿を初めてみた時、お鍋いっぱいに作った肉じゃがが思い浮かんできて、ひょっとしたらご料理好きな方が作っていらっしゃるのかなと思いました。

佐藤:同じような形でもちょっとしたラインで、うつわを見てこうすぐ料理が下りてくるというか。良いうつわというのは、見た瞬間にあれを入れたい、これを入れたいと普段食べている料理が浮かんでくるものかなと。楽しいですよね。

tabinotomo01-01

── 土や釉薬など素材の部分で、こだわっていらっしゃることはありますか?

佐藤:微妙な色の変化を出したいという感覚があって、釉薬は全て自分で調合しています。作りたい雰囲気に対して、どう調合すれば近づくかなと。釉薬は科学的ですね。それと水分量や作品の土の種類によっても色が少しずつ変わるので面白いですね。

どんな形につけたら面白いかなと。例えばソープディッシュは白、トルコブルー、ブルー、黄色、モスグリーン、白ベースに茶色い鉄粉を混ぜたものがあって、ブルーは水場との相性も良くて人気色です。しかしこれが形の変化が少ない大きめの器だとちょっと退屈な感じです。でもそこに料理という要素がプラスされるので、一概にそう言えないのが面白いなとも思いますね。

journey01_10

── 佐藤さんのうつわは、色んな使い方が浮かぶというか、このソープディッシュもアクセサリーを置いたりしてもいいなとアイデアが浮かびます。印象に残っているお客さまとのエピソードはありますか?

佐藤:食器として作ったものを花器として使ってくださったことがありましたね。お花をされている方で、深皿に剣山を入れてお花を生けたいと。面白いですね。今まではかっちりと、自分が決めたものを作るという感覚もありましたが、お客さまとの出会いで新しいものが生まれるっていうのがすごく面白いし楽しいです。

例えばマーケットで出会った方で「いつかお店をやるのでその時はぜひ作ってもらいたい」とお声がけくださり、その後実際にお店を持たれて、れんこんを取り入れた器をとオーダーいただいたこともあって、嬉しいですね。

sanpo02_03

Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve
2015年9月13日取材

【Interview】陶芸家 佐藤陽介さん (3/3)

*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。

このページの内容