【Report】生活とテクノロジー @東北工業大学 ライフデザイン学部

少し時間が経ってしまいましたが、2017年7月19日(水)と26日(水)、2週続けて宮城県仙台市にある東北工業大学 ライフデザイン学部の「生活とテクノロジー」という講義にゲストスピーカーとしてお伺いしました。

昨年夏「掌の記憶」牧浜篇の取材旅でつむぎやの友廣裕一さんに牡鹿半島をご案内いただいた際、友廣さんのご紹介で出会った佐藤哲先生。「90歳ヒアリング」のディレクター・デザイナーでもある佐藤先生からヒアリングノートをいただいたことがきっかけで、93歳の祖父へヒアリングをおこない「掌の記憶」杭全篇 を綴じました。そのヒアリングの様子を見てくださった佐藤先生からお声がけいただき、祖父へのヒアリングと「掌の記憶」の紹介で、講義のゲストスピーカーとして仙台へ伺うことになったという何とも不思議なご縁です。

とはいえ、大学時代は社会福祉を専攻していた私にとって、デザインはまったくの専門外。さらには生まれは東京、育ちは兵庫、大阪在住。デザインとも仙台とも縁のない私が何をお話したら良い時間になるのだろう?と不安いっぱいで、手探りのまま小綺麗にまとめたレジュメを用意しましたという状態でした。佐藤先生からのリクエストで「掌の記憶」全巻をはじめたくさんのZINEを鞄につめこみ、19日(水)仙台へ伺いました。

当日は佐藤先生のご提案で、まず学生の皆さんに自由にZINEに触れてもらってからのスタート。積極的にZINEに触れ、言葉以上のものをしっかりと感じとってくださる学生のみなさん。古いフィルム写真を一枚ずつ丁寧に見つめながら、暮らしの様子を手繰り寄せていく佐藤先生。そんな みなさんと時間を共にする中で、レジュメなんて必要のないコミュニケーションのかたちを逆に教わったようなひと時でした。

講義後見せていただいたレポートに綴られた学生のみなさんと佐藤先生の言葉にも、はっとさせらる道標がたくさんありました。特に印象に残った言葉の欠片を少しだけ、ここにも記させていただきます。


本は自分にとって、様々な世界を見せてくれるもの。

フィクションでないものは、しっかりとした世界が向こう側にある。

優しく温かい手触りの本に人の記録をすることで、目からも手からも温かみを感じられる。

心を可視化したような宝物のよう。

「本」「モノ」は自分より長く生きるということ。

“優しさ”はモノ(テクスチャー)でも伝えられる。

絵のような、写真のような。

analogのようなdigitalのような。

直接会うことの貴重さ。

小さきものへの視線。


本から生まれた言葉、出会いから生まれた言葉の生き生きとした響き。ここからまた、新しいものが生まれていく予感がします。本当にありがとうございました。

そして翌週の26日(水)は講義最終日。同講義で先にゲストスピーカーとして登壇された仙台市在住の映像作家 門傳一彦さん、東京からお越しの「あちらべ」のデザイナー 赤羽大さんという先輩クリエイターのお二人と一緒に、学生さんの質問に答えていくフリースタイルのひと時でした。講義後は佐藤先生とゲストスピーカーの先生方、学生さんも交えた懇親会もあり、二次会三次会と拠点も年齢も異なる方々とたくさんのお話ができた仙台の夜でした。

もう一ついただいたもの、講義を受講していた学生さんがプレゼントしてくださった似顔絵。絵は描き手のまなざしだなぁと改めて感じたあたたかな絵です。ほんの90分でも共にした時間が手元に残る、こんな幸せなことはありません。書いてくださったすみれさん、ありがとうございます。作業机の前に大事に飾って、製本の合間に眺めています。この絵のような空気を纏えるように、深呼吸しながらこれからも綴じ続け、出会い続けたいと思います。

そして最後に、このような機会をくださった佐藤先生、出会いのきっかけをくださった友廣さんにも改めて感謝の気持ちをこめて、この夏の記憶として記します。来年の夏も、宮城に遊びにいきたいなと思っているので、ぜひまたお会いしましょう。

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