【Interview】yucchino 上村幸野さん (2/3)

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鞄職人のご主人と2012年に立ち上げたという、神戸発オリジナルバッグブランドyucchino(ユッキーノ)。上質な天然皮革を使用したOTONA eco-bagを中心にすべて手作りのMADE IN JAPANという鞄作りへのこだわりを、ブランドディレクターの上村幸野さんに伺いました。

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#2 作り手と使い手が生み出す、色とかたち

── yucchinoさんはカラーバリエーションが豊富ですが、創業当時からこの色数で展開されていましたか?

上村: 最初はapricot、blue、green、beige、black、brownと香港からサンプル用に仕入れたイタリア製の革で6色作り、国内の同じような種類の革に切り替えていきました。中でもapricotはピンクでもオレンジでもない珍しい色で一番反応が良かったです。

元々革でこういった軽いバッグが欲しいのは30代オーバー、お母さんになった方や60代70代の私の母世代がターゲットだと思い、あまり突飛な色ではなく、でも他では見ない色にしようという展開でしたね。

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── 色のネーミングも、smokey-orangeやpink-goldなどオリジナルですよね。染めのオーダーはどのようにされていますか?

上村:すべてタンナーさんにお願いして手染めで、染色したあとにもう1度手染めでムラを出してもらっています。少し濃かったり薄かったり、シボによっては色が乗ったりするのが陰影になって、合成皮革には出せない風合いになっています。

色についてはPANTONEのカラーチップなどは使わずに、雑誌から探していますね。例えば紫が欲しいなと思った時には「モデルさんのバック紙の紫のこの部分」とか。陰影がついて薄くなったり濃くなったりするので、この部分で出してくださいとカラー見本として渡していいます。

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── それでこう、他ではあまり見かけないような色味なんですね。染色はずっと決まったところでされているのでしょうか?

上村:私たちの要望を聞いて染め職人さんに橋渡しをしてくださる方が間にいらっしゃって、ずっとその方にお願いしています。この種類の革なら、このタンナーさんが上手いから頼んでくださっているんですね。

お願いしてすぐにできるものではないので、大体2か月くらい前には「来シーズンこの色が欲しいな」というものは決めておいて、リピートのあるものは革が残り5枚程度になったら頼んでおこうという風にしています。

── 革1枚というのは、いわゆる牛1頭丸々のものですよね?

上村:はい、1枚の革は横幅が大体2~3メートルあるので、今私たちが囲んでいるテーブルの一回り小さいくらいからもう一回り大きいくらいですね。革は牛のお腹でと背中で割って半身ずつになっています。

その革に対してどのサイズのデザインをいかに上手く組み合わせてられるかが、どれだけコストを下げられるかに繋がる大切なところで。鹿革は野生なので鹿同士が喧嘩した傷で革にも穴が開いていたりして、そういうところは避けてとっていきます。夫が言うには縫製よりも、どう革をとっていくのかが一番難しくて頭を使うと。そこはこだわりですね。

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── 革1枚ごとに向き合って作りあげていく様子が伝わってきます。デザインのこだわりについても伺えますか?

上村:例えばこのバッグの口のマグネットは、試作の段階ではなかったものです。実際にまず自分が使ってみると、外出先で鞄を置く時に横に倒さないと口が開いて中身が丸見えになってしまって。

でも、口の真ん中をスナップで留めるような一般的なデザインだと可愛くない。せっかく柔らかい革でつくっている丸みが潰れてしまうので、少し浮かす感じで留めたいと夫に相談して、取っ手と一緒に縫い込む方法を考えてもらったのは1つのこだわりですね。

── 作り手であるご主人と、使い手である上村さんが一緒に考えるからこそ生まれたんだな、という感じがしますね。

上村:実際に私が持ちたいと思うものだけを作っていますね。とはいえできることは限られているので、でもその中で流行も感じながらできたらいいなと。

あとはたくさんの人に使ってもらいたくて。オーダーメイドで1つ5万円とか10万円もするようなバッグではなくて、革のエコバッグとして、多くの人が気軽に色違いも欲しい、違うアイテムも欲しいと思ってもらえるような買いやすい価格を目指すのがコンセプトで、こだわりですね。

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Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve
2015年10月3日取材

【Interview】yucchino 上村幸野さん (3/3)

*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。

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