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【3】「記憶のたねを並べる」篇 | 自宅アトリエのつくりかた

自宅アトリエのつくりかた ‐ZINE作家が大切にしている20のこと-

自宅の限られたスペースも
わたしだけのアトリエに

ZINE作家michi-siruveが
自宅アトリエで大切にしている20のこと

【3】記憶のたねを並べる

(11)譲り受けたもの

アトリエには大切な人から
譲り受けたものが散らばっていて

スタンドライトは
編集・ライティングの先生でもある
青山ゆみこさんが
以前アトリエで使用されていたもので
蛍光灯の無機質な明かりに代わって
夜のアトリエを
やさしくあたたかな
ひかりで包んでくれる

紙どりを計算するときはいまだに
印刷会社時代にもらった
SHARPの電卓を叩いていたり

家具大工だった
祖父がつくってくれた
漉き枠で紙を漉いていたり

祖母が植木鉢にさしていた
陶器のシャム猫だったり

譲り受けたものだからこその
その人との思い出や気配があって
アトリエにそれがあるというのは
とても大切なことのように感じている

(12)先生の手製本

手製本はこれまで
3人の先生から教わっていて
中にはドイツ人の先生もいて
それぞれの文化や美学やスタイルに
触れてきたけれど

静けさと美しさが
ともにあるような手製本は
綴じ方もシンプルで美しく
でも綴じている最中も綴じたあとも
手にとるとワクワクする
という共通点があった

とりわけ製本家・都筑晶絵さん
製本ワークショップで教わった手製本は
紙の質感も綴じもミニマルでとりわけ美しく
「余白をたのしむ小さな手製本」は
都筑さんから教わった綴じが
土台となっているものが多い

ワークショップで制作した作品も
個展で購入した都筑さんご自身の作品も
都筑さんの作品である小箱におさめて
いつでも触れなおせるようにしている

いつか箱づくりも教わりたくて
その日を夢みながら精進している

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(13)大切な本

学生時代は書店で
アルバイトをしていたほど
本を読むのも好きなのだけれど
本棚はあまり大きくしないようにしていて

手元においている本たちは
生涯そばにおいておきたい
とっておきの本たちだけ

一番身近に置いているのは
さまざまな辞書や事典で
その分厚さも含めていとおしく

あとは好きな作品の
作り手の「ことば」に触れるのも好きで
特に加瀬亮さんのインタビューや
連載、本のことばは
何度も読み返したくなる静謐さがあって
自分が何かをことばにする前には
必ず読み返していたり

[Alexandros]の川上洋平さんの
インタビューやエッセイで並ぶ
ことばの潔さというか
リズム感のようなものも好きで
「わたしもわたしでいいや」
と背中を押してもらえるような

大学時代、社会福祉を教わった恩師の著書も
ソーシャルワークの初心に立ち返るために
そばにおいていて
製本机周辺のすぐ手が届く棚には
そんなとっておきの本たちが並んでいる

子どもの頃好きだった
海外の児童書や仕掛け絵本は
「わくわく」の泉のような存在で

「箱」にしまう設えの手製本や
明治時代の英和辞典や昭和の手製本
花をおさめたアートブック
過去の日記帳や製本メモノートなど
どれもやっぱり「わくわく」という
共通点があるような

あらためて撮影すると
佇まいに宿る
静けさや美しさも共通していて
michi-siruveが大切にしたいものを
確認するための存在になっている

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(14)かおりのこと

自宅の中にあるアトリエでは
仕事モードのスイッチを入れるための
何かが必要不可欠だと思っていて

暮らしのルーティンを終えて
仕事モードに切り替える時に
欠かさないのが
「かおりを纏う」ということ

製本机に座って「さぁ仕事だ」というときに
最初に手にとるのは
机上にある香水の瓶で

Miss Dior Parfumと
Jill by JILL STUART Eau de Toiletteを
その日の気分で使い分けている

Miss Diorは社会人になって
初めて買った香水というだけで
もう特別な思い入れがあって
しゃきっと気合いを入れたい日は
かならずMiss Diorを纏う

Jillは少し甘めなのだけれど
Miss Diorよりは背伸びせずに纏える
ちょうどよさがあって
ちょっと肩の力を抜きたい日は
Jillを手にとっているような

どちらもスイッチを入れてくれる
大切なアイテム

(15)音のこと

かおりと並んで
自宅アトリエでの仕事のスイッチを入れる
大切な役割を担っているのが音楽たち

製本をするときも、文章を書くときも
写真のレタッチをするときも
必ず音楽をかけていて

静謐な空間での孤独な制作作業に
リズムや流れを与えてくれるような
何かを生み出す過程には
必要不可欠な存在

スピーカーはあえて
sanagの小型のワイヤレススピーカーで

小さな頃にカーステレオや
ラジカセやプレーヤーできいていたような
ちょっとラフな懐かしい音に
近いような気がして
繊細に音を込めた制作者の方には
少し申し訳ない気持ちもありながら
懐かしい響きとともにきいている

がんの治療の後遺症で
きけなくなった声や音が
たくさんできてしまってからは
SONYノイズキャンセリング付きの
イヤホンにも随分助けられていて3代目

アトリエの外から
苦手な音が飛び込んできたときは
迷わずイヤホンの静寂に逃げ込んで
最新のテクノロジーの助けを得て
心を落ち着けて制作を続けたり

アトリエに欠かすことができない
大切な存在

(16)白とグレーのあわいのもの

特に意識はしていなかったけれど
家にあるほとんどが白から薄いグレーの
微妙なグラデーションになっていて

質感はいろいろで
器やタイル、カーテンやラグ
テーブルクロスも全部そのグラデーション

TILE KIOSKの大小さまざまなタイルたちは
製本机の道具立てや紙片のメモ置きや
ダイニングテーブルで器やトレイ代わりにしたり
大きな花器の花台にしたり

転勤が多い暮らしだった頃に
間に合わせで慌ててネットで寄せ集めた
色がちぐはぐだった安い家具たちも
白やグレーの壁紙シートで貼り替えて
今やすっかり白とグレーのあわいの世界に

(17)澄んだもの

澄んだものが好きで
どうしても集めてしまう癖があって

オオタ硝子研究室さんの
氷山のような白のおちょこや角皿を
製本机に飾っていたり

ソーダ色のデキャンタやコップも
飲み物を入れてアトリエに常備

白いオブジェと宙のようなオブジェは
製本のおもしにしていたり

あとは各地から集めた瓶やら何やら
あちこちに澄んだものがあって
時々水を張っては
陽のひかりにかざしてみたり

水辺から離れた都会のアトリエで
水面のあの澄んだ感覚に
触れるための大切なものたち

(18)ねこたち

好きな生き物は何かときかれたら
迷わずねこと答える

実家にいた頃は
ジルというまっしろで
青と黄のオッドアイのねこと
一緒に暮らしていて

今のアトリエでは
ねこが飼えないので
代わりにいろんなねこたちがそこかしこに

ほとんどはいただきもので
全部で何匹いるのかわからないけれど
いつもただそこにいてくれていて

ひとりぼっちの制作の
寂しさを紛らわせてくれる
大切ななかまたち

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(19)古道具たち

かつて淡路島にお店があった
小豆堂さんでみつけた古道具は
アトリエのあちこちにあって
古い薬瓶は製本作業時の
糊入れとして愛用していたり

ガラスペンは個展の時に使ったり
道具箱や鍵付きの5年日記帳は
撮影小物になっていたり
おもちゃのミニハーモニカは
ペンダントにしてさげていたり

浅草橋にある白日さんでみつけた
ちいさな花器とコップ2つや
四天王寺の市でみつけたオブジェなど
てのひらサイズの小さな古道具がたくさんある

古道具がいとおしいのは
誰かがずっと大切にしてきたからこそ
今もここにある
という当たり前で尊いことを
確認するためなのかもしれない

(20)古着たち

アトリエをひらくときは
決まって纏う古着がある

その昔神戸の海岸通りに
「楽園」という倉庫のような
どーんと大きな古着屋さんがあって
大学1年生くらいからずっと通っていた

ずっと手元にあるトラベラーバックは
20年以上使っていて
今も当時の店員さんが開いている
古着屋さんに通っている

教会服、手術着、アトリエコート
ワンピース、花柄のスカーフ
オーバーオール…
時代をこえてのこっているものは
もういつまでも古くならないのだと
古い洋服たちを纏うたびに思う


自宅アトリエのつくりかた ‐ZINE作家が大切にしている20のこと-