(2016.11.24 @ベランダ長屋 「記憶を綴じる、手づくりの本」)
「記憶を綴じる、手づくりの本」展、期間中は本当にたくさんの方々がお越しくださり思い出もたくさんなのですが、その中でも一番遠方から来てくださった大切なお二人のお客さまについて、お礼の気持ちもこめてここに記したいと思います。
今回一番遠方から来てくださったのは、山陰を中心に活動されている音楽ユニット「マイトリー(maitri)」のお二人。鳥取県在住の“もりさや”さんこと森田さやかさんと、島根県在住の“hiuta”さんこと持田陽平さん。マイトリー関西ツアーの合間に展示を観に来てくださいました。
ことばと写真を“本に綴じる”ことを続けている私にとって、“音楽”というものは、本には綴じこめることのできない力を持った存在で、特に闘病を経験してからは生きていく力をもらう心の拠り所でもあります。だからこそ、それを生みだし人々の心に響かせるミュージシャンの方々は「本当にすごいな」と改めて尊敬しています。
少し遡って、お二人との出会いについて触れると、実はマイトリーのお二人とはそれぞれまったく別の場所で、別の友人の“昔からの友人”として出会ったという不思議な縁があります。それぞれお会いしたのは一度きりだったのですが、2016年の春に陽平さんとふとメッセージを交わしたことがあって「癌闘病中に音楽に支えられたことがある」という想いを伝えると、陽平さんも友人から「音楽は腹の足しにはならないかもしれないけれど、命の足しになる」と言葉をもらったことがあるという話になり、“音楽”や“言葉”、そしてmichi-siruveが大切にしている“掌(てのひら)”について、短いながらもメッセージを交わしたのでした。そのメッセージがとても心に残っていて、その後も時折メッセージを交わしたり、曲を聴いたり、創作活動に力をもらっていました。
そして今回偶然に私の展示とマイトリーの関西ツアーが重なりお二人でお越しくださり、ZINEを一冊一冊、ほんとうにじっくりと手にとって読んでくださいました。そして、展示スペースのお隣にある古書店「みつづみ書房」さんの空間で、マイトリーさんのアルバム『in the sun』から「ほんとのきもち」と「home」を贈ってくださいました。その瞬間も何かこみ上げるものがあったのですが、その日の晩に改めて冷静に聴くと、展示していたZINEに綴った私の言葉に対するアンサーのような曲にも感じて、上手く言葉にはできませんが、優しくそっと背中を押してもらったような気持ちになりました。その時の気持ちを忘れないように、そしてお二人への感謝の気持ちをこめて、私のどうしようもない想いや葛藤を綴った一文に、そっと贈られたように感じたフレーズをお借りして、ここに記します。
「悲しみに沈んだ その絵を眺めながら
余計なものを手放し ありのままを綴じてみようと
この本が生まれるきっかけになった 2016年秋の記憶」michi-siruve「どうしようもない灰色」(ZINE『ココロイシ』より)
「おそれるきもち 手放したら
ほんとのきもち 確かになる」マイトリー「ほんとのきもち」(アルバム『in the sun』より)
「生と死、花と故郷、記憶と喪失
いつかは失われるものと どう向き合っていくのか」michi-siruve「mémento-mori -大震災直後の西宮へ-」(ZINE『14年の軌跡』)
「帰れる場所は ここにあるから
戻れる場所が ここにあるから」マイトリー「home」(アルバム『in the sun』より)
実は別れ際にもう一曲、陽平さんのソロで「ハックルベリー」(アルバム『hiuta music life music』より)という曲も贈ってくださいました。陽平さんの故郷、島根県の大根島を想いながらつくられたというその曲は、私がずっと探している“ふるさと”の存在そのもののような、確かに、静かに、いつもそこに在るものを感じて、気が付いた時には涙が頬をつたっていました。音楽が“心に響く”忘れられないひとときを、本当にありがとうございました。
大根島、そしてもりさやさんの暮らす馬佐良、来年訪ねたいな。そしてその旅で出会ったものを、この日のお礼として綴じてお贈りできたらいいな。もりさやさん、陽平さん、忘れられない一日を、本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いいたします。
左からマイトリー『in the sun』『gift』『hiuta music life music』
※展示させていただいたベランダ長屋のみつづみ書房さんにもCDがあり、お買い求めもいただけます。