『掌の記憶』 – 牧浜 –
まるく磨き上げられた鹿の角に
幾重にも重なる糸が輪を描く
手作りのアクセサリーOCICA
牧浜のお母さんの掌から生まれた
小さな輪から縁がひろがる
掌の記憶-tenohira no kioku-
19篇目になる「掌の記憶」-牧浜- は、宮城県石巻市にある牧浜という小さな漁村のお母さんたちの元を訪れ、お母さんたちが2011年の震災後から製作を続けている鹿角のアクセサリー“OCICA”の今を綴じた本です。
牧浜は東日本大震災の震源地から程近い牡鹿半島の西部に位置する地区で、牡蠣の養殖が盛んだったこの地区もまた、津波により大きな被害を受けました。浜も牡蠣の加工場も流され、住まいを流された方とそうでない方もいる中で「途切れかけたコミュニティの繋がりや営みを再生する方法はないだろうか?」という問いは、牧浜だけでなく様々な地域で生まれる問いなのではないでしょうか。
その問いに対して、牡鹿半島に群生する鹿の角という地域資源に目を向け、様々な人に声をかけながら牧浜の人々と出会い、鹿の角と漁網の補修糸を材料にしたアクセサリー“OCICA”を立ち上げたのが、震災後間もない宮城県に入り、支援団体のエリアマネージャーとして避難所を巡りながら地域の人々の声を聴き、専門性を持つNPOとの橋渡しをする活動を続けていた一般社団法人つむぎや 代表の友廣裕一さんでした。
加工場で牡蠣剥きを生業としていた浜のお母さんたちが再び1つの場に集い、ものづくりを通して収入を得ることで、日々の暮らしや人々との関わりを紡ぎなおすきっかけにもなり、牧浜から国内外へ広がっていったOCICA。続けてきた浜のお母さんたちがいて。OCICAを購入したり販売したり、製作体験に浜を訪れた人々がいて。小さな縁がひとつずつ繋がり、この5年間で8,000個以上のOCICAが旅立ったそうです。
2016年6月に大阪で開かれた友廣さんのワークショップでこのお話を聴き、5年間続いてきたOCICAの「今」を綴じて贈りたいという想いが芽生えてその場でご相談。7月末に牧浜を案内していただく機会に恵まれ、この本が生まれました。充分なものを伝えるには足りない小さな豆本ですが、写真1枚、ほんの一言でも手にとる人の心の琴線に触れたり、記憶の呼び水となり語りあうきっかけになれば嬉しいなと思います。
まずはこの5年間“OCICA”という営みを続け、育んできた皆さんへ1冊ずつお贈りして、関西にいる私の手元にある1冊からも新たな縁が生まれていくように。掌から掌へと繋いでいけたらと思います。
Web記事の「旅の記憶 -牧浜-」には、7月28日に訪れた牧浜集会所でのOCICA製作の様子と、翌29日に行われた「Reborn-Art Festival」のプレイベント、Reborn-Art Tourでのワークショップの様子を少し紹介しています。本にはもっとたくさんの写真が綴じられているので、本を読んでみたいなと感じてくださった方がいらっしゃれば、ぜひお声がけください。9月15日に兵庫県伊丹市で開かれるのイベント「鳴く虫と郷町2016」鳴く虫とカミモノガタリ~古本と紙モノの小さな市~でも展示予定です。
震災後からOCICAが生まれた物語は『OCICA ~石巻 牡鹿半島 小さな漁村の物語~』という書籍にもなっていて、Webや雑誌などのメディアにも丁寧な取材記事がたくさん掲載されているので、そちらもぜひご覧ください。
こうして大切な本と縁がまた1つ。牧浜まで案内してくださったつむぎやの友廣裕一さん、旅をご一緒してくださったひとつむぎ舎の村上有紀子さん、そして優しい笑顔で迎えてくださった牧浜のお母さんたちには本当に感謝の気持ちをこめつつ、紹介とさせていただきます。長文読んでくださり、ありがとうございました。
OCICA Webサイト
http://www.ocica.jp/
※アクセサリーや書籍はWebサイトからもご購入いただけます。