【Report】「記憶のアトリエ」 in 名古屋

「記憶のアトリエ」 in 名古屋 – 「グリーフケア」をみつめる大学の講義で –

2025年7月5日(土)愛知県にある椙山女学園大学 人間関係学部の「グリーフケア演習」の補講として、本づくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」in 名古屋をひらきました。

声をかけてくださったのは、この講義を担当する森川和珠(わこ)先生。昨年に引き続き、講義を受講する学生のみなさんのためにとご依頼をいただきました。

今年も「一人ひとりが、思い思いに」というわこさんのご依頼のもと、学生さんたちへのお手紙のようなご案内ページをお送りし、いろんなかたちの手製本や素材をたくさん詰め込んで伺いました。

大学で、「グリーフケア」を学ぶ大学生のみなさんと

会場は、昨年と同じ緑がきらめく明るい教室。2年目ということで昨年の様子を思い出しながら、わたしが窓際の一角にアトリエの素材や道具を並べる島をつくって材料を並べている間に、わこさんがそのまわりに本づくりができる大小さまざまな島を浮かべてくださり、「いつもの教室」のレイアウトが少しずつアトリエの設えに変わってゆきました。

「ここは一人で過ごしたい学生さんのための島」「ここは誰かと一緒に過ごしたい学生さんのための島」学生さんたちを思い浮かべながらわこさんが設えてくださった本づくりの島々が、教室に余白とリズムを運び、気持ちのよい空間になりました。

アトリエの様子

しばらくすると学生さんが一人、またひとりとお越しくださり、みなさんお揃いのタイミングで素材の島に集まりアトリエの道具や素材について簡単なご案内をして、3時間ほどのアトリエがはじまりました。

緩和ケア医の先生がくださった和紙のシール、看護師さんがくださった色とりどりの紙やマスキングテープ、湖畔から届いた紅葉、画家の友人から届いた水彩画のような和紙、学生さんがくださったシール、活版印刷された活字、そしてさまざまなかたちをした手製本。

そこにわこさんが今回のアトリエのために持ってきてくださった押し花やシールなども加わり「記憶のアトリエ」をはじめてからの6年間で各地から集まった大切な記憶の欠片たちが素材の島いっぱいに広がります。

どの素材も「アトリエのみなさんに」と寄付してくださった贈り主のみなさんの思い出とともにあるものなので、その思い出も一緒に手渡しながらみなさんと3時間を過ごしました。

写真をもっと見る

誰かと一緒におしゃべりしながら相談したり、自分が手にとった素材と静かに対話しながら黙々と作業を進めたり。みなさんの様子をみつめながら、あまり邪魔をしないようにそっと覗かせていただいたり、少し声をかけさせていただいたりしながら、選んでくださった手製本や制作の様子も、少しだけ撮影させていただきました。

手にとったものやそれに触れる指先、そしてページに綴られたものから伝わるそれぞれの「わたし」。それぞれの余白やリズムに耳を澄ませながら過ごすひとときは、ほんとうに気持ちのよい時間でした。

アトリエで流れていた時間の詳細は参加者のみなさんとの思い出として留めますが、その空気を少しだけ感じていただけたらと、2025年夏のアトリエでともにした大切な時間のそこにあった景色を少しだけおすそわけさせていただきます。

写真をもっと見る

アトリエの写真はお一人おひとりのプライバシーを一番大切にするために、極力詳細なものは写らないように、作業をされているお手元や素材などの空気をおさめる範囲にとどめています。

それでも伝わってくる一人ひとりの「わたし」があって、写真というかたちでその時の記憶を少しだけこうして残していられること。それぞれの写真からみなさんの様子が思い出されて、宝物だなと思います。

アトリエに参加してくださったみなさん、そして写真の許可をくださったみなさん、本当にありがとうございました。


アトリエ自体は本当にいつも通りあっという間に過ぎてしまうもので、場があたたまってきた頃には終わりの時間。いつも名残り惜しくてたまらないのですが「できたら教えてね」と声をかけながら、来た時よりも美しくの心で黙々と素材や道具をトランクにしまって帰路に。

わこさんとも帰り道にアトリエ時間を振り返りながらじんわりあたたかい余韻を抱きしめ、随分軽くなったトランクを抱えて大阪に戻りました。

アトリエを終えて

今回のアトリエでも、わこさんや学生さんから「アトリエで使ってください」と、たくさんのすてきな記憶の欠片をいただきました。

いただいたシールはお越しくださったみなさんが探しやすいように、テーマ別にシール帖に貼りなおして保管しているのですが、シールを台紙から剥がす時の感触で「あぁ、このシールはきっと、ずっと大切に持っておられた宝物だったんだろうな」と気づくことがあります。

そんな大切な宝物に宿る記憶や想いは不思議と伝わるのか、少しあとに別の場所でひらいたアトリエで、子どもたちが目をキラキラさせて手にとってくれていました。こうして大切な記憶を寄せてくださることへの感謝と、それを次の誰かに手渡せる喜びをあらためて感じながら、ありがとうございますの気持ちを添えて、今回のアトリエのレポートとさせていただきます。


レポート自体はささやかなものですが、みなさんの学び舎でわこさんと学生のみなさんと一緒に過ごすことができて、しあわせな時間でした。本当にありがとうございました。

みなさんの残りの学生生活、そしてこれからの日々も、あの日の空気のようにほんのりあたたかい微笑みや声に満ちた日々になりますようにと願っています。

「記憶のアトリエ」について