【Report】第8回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会 市民公開講座登壇&ZINE展示

第8回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会
市民公開講座登壇&ZINE展示

2026年6月12日(金)第8回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会市民公開講座で「患者・家族・専門職、それぞれの体験や本音をわかちあう」ために医療の場で重ねてきたZINE作家としての実践についてお話しました。

翌6月13日(土)~14日(日)の2日間は、東京の国立がん研究センター中央病院 築地キャンパス 研究棟で開催された学術集会会場でもご紹介したZINEやアトリエの取り組みを展示し、来場者のみなさんとわかちあう機会をいただきました。


まずはじめに、市民公開講座をご視聴くださったみなさま、学術集会会場の展示にお越しくださったみなさま、企画運営してくださったみなさま、そして講座と学術集会の場でこれまでの取り組みをわかちあうことをご了承くださったmichi-siruveの活動を通して出会ってきたみなさま、本当にありがとうございました。

「ZINE(ジン)」というものも移動アトリエ「記憶のアトリエ」もきっとよくわからない活動なので、「医療や支援について考える場で関心をよせていただけるのだろうか?」と心配もあったのですが、みなさん心から関心を寄せてくださり、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、心理士、保健師、作業療法士、教師…と本当にさまざまな職種のみなさんが展示にお立ち寄りくださいました。

みなさんそれぞれに、これまで関わってこられた患者さんやご家族さん、また職場の仲間を想いながらお話してくださったり、その方々のためにこれから何か一緒にできることはないかと具体的なご相談を寄せてくださったり。今回の学術集会のテーマでもあった「共に社会を創る」を実践しようと考えてくださるみなさんの想いとアクションに、心が動かされた2日間でした。

視聴者・来場者みなさんとお話したことはこれからの種として心の中にもっておきますが、市民公開講座と展示でみなさんにお渡ししたもの概要だけ、記録としてここに綴りのこしておきたいと思います。

※学術集会参加者のみなさまは、この後アーカイブでも視聴いただけるそうです詳細は学術集会からのご案内をご確認ください。

「AYAがんの医療と支援のあり方」を考える場で

流産からの希少がん(絨毛がん)の治療を経験し、michi-siruveとして「体験や本音をわかちあう」制作活動を重ねて12年。

これまでもさまざまな場所でお話をしたり展示やアトリエをひらいたりしながら、患者・家族・専門職のみなさんとわかちあうことを重ねてきましたが、今回のように「AYAがんの医療と支援のあり方」を考える「学術集会」という場で、ZINEやアトリエの取り組みにフォーカスしてお話することも、展示を行うことも初めてのことでした。

がんに限りませんが、突然の病に直面した時、まず必要なことは治療するための「医療」であり、治療や生活が守られるための「支援」です。それは患者・家族としての体験からも、大学時代にソーシャルワークを学び、今も支援の場で働く専門職の同志がいる一人としても痛感していることでした。

がんに関しては、治療そのものや支援もまだまだつくってゆかなくてはいけないという現状。

それに加えて、体験や本音のわかちあいというものの必要性を語る余白はあるのだろうかと不安もあったのですが、いざお話してみると、だからこその切実な声がたくさん届きました。

「今ある治療や、治療や生活への直接的な支援では解決しきれないいたみやくるしみ、かなしみがまだまだたくさんある」そのことを患者さんもご家族さんも支援者のみなさんも痛感されていて、それらを抱えた人たちのために何かできることはないかという視点で市民公開講座をきき、展示をみにきてくださったのだと感じています。

michi-siruveの活動は営利的なものではありませんし、一人ひとりの想いに伴走することを大切にしているがゆえに、わかりやすく発注できるサービスや商品にはなっていないものばかりで、かつ個人の活動なので、できることは本当にささやかなことです。

それでも具体的に何か一緒にできたらと、ご相談くださるお一人おひとりの熱意と、日々関わり向き合っている患者さんやご家族さんを想う心に、わたしができることがあればと対話を重ねた2日間でした。

何かお役に立てることがあるかはわかりませんが、これからもご依頼をくださる方が大切に想う人、想いを大切に、一つずつのご相談とともに歩んでいきたいと思います。

市民公開講座
「“AYA世代と共に社会を創る”その前に
〜患者・家族・支援者の本音をわかちあう、ZINE作家の実践から考える〜」でお話したこと

市民公開講座では「AYA世代と共に社会を創る」という学術集会のテーマに対して「共に社会を創るその前にもう一度、当事者のみなさんの体験や想いを丁寧にきくという過程を丁寧をみつめましょう」という気持ちをこめて、ZINE作家として体験や想いをきいてきた12年間の実践についてお話しました。

まずは「ZINE(本)を一緒につくる」というわかちあいのスタイルの元となった、大学時代に社会福祉学科で教わった3名の先生方のご著書と一緒に、いえなさ(言えなさ・癒えなさ)を抱えた当事者の方の声や人生をきくことのヒントをわかちあいました。

そして、書籍等ではなくZINEという「本のDIY」自ら表現し、つくり、手渡しわかちあってゆくスタイルを選んだ理由をお伝えしたうえで、実際にどのような依頼があってZINEを制作してきたのか、移動アトリエをつくってきたのかをいくつかこれまでの協働をご紹介しながらお伝えしました。

お伝えしたのは「ZINEをつくる」という関わり方ですが、司会の楠木先生や視聴者のみなさんからのコメント・質疑を通して、他者と関わるうえでのあり方や関わり方にも共通するところがあると受けとり、それぞれのあり方や関わり方をみつめてくださったことを感じました。

お話の概要だけ感じていただけたらと、もくじと導入部分の数枚だけこちらにも置いておきます。

スライドの一部はこちら

また、今回の市民公開講座と展示では、昨年末に完成したZINE『lead-off man』について、依頼主である由美さんと迷いながら歩んだ制作の道のりや、完成後の対話のひろがりについても、参加者のみなさんにお伝えする機会をいただきました。

スライドの一部はこちら

『lead-off man』は、0歳と15歳で2つの希少がんを経験した大輝くんの18年を見守り支えた、14名の専門職とご家族の寄稿文で紡いだZINEです。

医療や教育の専門職、地域で“いつも”や“ふつう”を支えてくれた人たちから「寄稿文」というかたちで、大輝くんと過ごした時間や交わした言葉をお預かりして1冊に綴じました。

みなさんが真摯に綴ってくださった文章から「その人だけが知っていた大輝くんのこと」や「みんなが同じ時にみつめていた大輝くんのこと」がじんわりと伝わってきて、医療や教育の場はもちろん、地域でも一人ひとりが関わりあい、支えあうことができるということを実感したり、自分にできることは何だろうと考える対話の呼び水となる大切なZINEへと育っています。

会場展示には由美さんもかけつけてくださり『lead-off man』の展示スペースの展示物や設営はすべて由美さんにお委ねしました。寄稿文の奥にある大輝くんの歩みや、読み手のみなさんが寄せてくださった感想などがひろがり、よりいっそう大輝くんとわたしたちの歩みや想いを一緒にみつめることができる空間になったように思います。

このような場と時間が実現したのは、寄稿してくださった寄稿者のみなさん全員からご了承をいただけたからこそ。こうしてAYAがんの医療と支援のあり方を考えたいと全国各地から集まってくださったみなさんとわかちあい、感じたことや考えたことを語りあうことができ、ZINEからかけがえのない対話とあらたな協働が生まれていることに胸がいっぱいになりました。

改めて、ご寄稿くださったみなさんとお越しくださったみなさん、展示の実現をサポートしてくださったみなさん、そして一緒に駆け抜けてくださった由美さんに心から感謝申し上げます。

そして、これからのこと

冒頭にもお伝えした通り、今回市民公開講座と会場展示をあわせて行えたことで、関心を寄せてくだったさまざまな職種のみなさんが展示にお立ち寄りくださいました。

それぞれにこれまで関わってこられた患者さんやご家族さん、また職場の仲間を想いながらお話してくださったり、その方々のためにこれから何か一緒にできることはないかと具体的なご相談を寄せてくださったり、これからの種をお互いの心に持ち帰ることができたように感じています。

持ち帰った種からいつ芽がでるかはわかりませんが、「共に社会を創る」という今回のテーマと一緒に心に持ち続け、それぞれの時が来た時に何か一緒につくることができるよう、これからも一つひとつのご依頼やご相談に真摯に向きあっていきたいと思っています。

今回会場ではもちろんのこと、準備から当日の様子を見守ってくださったみなさんへの感謝の気持ちをこめて、Reportの結びといたします。これからもよろしくお願いいたします。

市民公開講座と展示の概要

市民公開講座概要

市民公開講座概要より

29歳で流産からの希少がんの治療を経験したZINE作家の藤田理代さんは、治療の旅路で患者として感じたことや体験を丁寧にみつめ、ZINE(ジン)という小冊子で綴り共有したり、病院や地域でZINEをつくる移動アトリエをひらきながら、患者・家族・支援者が立場を超えてそれぞれの気持ちや体験をわかちあう場をひらく活動を12年続けてこられました。

ご自身の体験や、依頼のあったご家族や支援者一人ひとりの想いを丁寧にきき、言葉や写真とともに手製本に綴じてゆく藤田さんの作品たち。

どのような想いやプロセスで体験をわかちあってこられたのかを伺いながら、本学術集会のテーマでもある“AYA世代と共に社会を創る”ための手がかりにもなる、“それぞれの本音をわかちあう”というプロセスについて、みなさんで共に考える時間にできたらと思います。
お立場に関係なく、ご自身の人生で感じてこられたことを見つめて形にしたいと考えている方もご参加をお待ちしています。

講 演:藤田 理代
参加費:無料
ライブ配信です、会場開催はございません。
当日の配信は事前登録制となっておりますので「市民公開講座参加登録はこちら」のボタンからお申込みください。

ZINE BOOK LIST - 講座で紹介・学術集会で展示したZINE-
1.体験を言葉にする
-がん体験を綴じたZINE-

AYA世代でがんを経験した患者として治療の旅路で感じたことや体験を綴った作品や、緩和ケアの先生との共同制作や展示を通して、中々言葉にできない患者の本音を表現し、他者とわかちあう過程で感じたことを紹介します。

ZINE『ココロイシ』(2016)

「波打ち際に沈んだ石 × がん罹患から2年間の記憶」

希少がんに罹患して、丸2年が過ぎた節目に綴じたZINEです。治療後、波打ち際で拾い集めたハートの形をした石たちの写真の奥に、がんに罹患してからの日々の記憶やその時々の感情を綴じこめています。

ZINE『汀(みぎわ)の虹』(2017)

「小さな詩と花× がん罹患から3年間の記憶」

希少がんに罹患して、丸3年が過ぎた節目に綴じたZINEです。治療3年という月日で経験した“心の揺れ”に焦点をあてて綴っています。

『汀の虹』『ココロイシ』- music –(2022)

豆本詩集『汀の虹』から生まれた2つの抒情歌。
詩  藤田理代(編 儀賀理暁)
作曲 儀賀理暁

※企画展「ホスピタルアート in ギャラリー」(2022)展示作品

ZINE『ホスピタルアートを考えるその前に』(2023)

2022年秋に緩和ケア医の儀賀理暁さんと登壇したトークセッション「ホスピタルアートを考えるその前に」で、企画者のホスピタルアートディレクターの川西真寿実さんも含めた3名の語りを綴じた手製本。

ZINE『掬(きく)することば』(2025)

がん罹患から丸11年の節目に制作したZINE。
“いえないいたみ”を抱えたわたしが緩和ケア医の儀賀理暁さんとみつめたことばたち として、緩和ケア医の儀賀理暁さんと交わしたメッセージから掬した72篇のことばの記憶を、3冊組のZINEに綴じました。

2.周囲とわかちあう
-ZINEづくりの移動アトリエ-

病院や地域で、医療や福祉の専門職の方々と開催してきたZINEづくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」の実践を通して、患者・家族・支援者が立場をこえて自分をみつめ、わかちあう時間の中で感じたことを紹介します。

3.ともにつくる
-ご家族・専門職のみなさんと綴じたZINE-
ZINE『lead-off man』(2025)

A世代でがんを経験した患者さんの“いつも”や“ふつう”を医療や教育などそれぞれの専門性で見守り支えた14名の専門職とご家族の寄稿文で紡いだ作品について、制作の過程や立場をこえたわかちあいから感じたことを紹介します。

ZINE「掌(てのひら)の記憶」(2015-)

依頼主が暮らす町を訪ね、お預かりした“大切な記憶”を豆本に綴じてお贈りするプロジェクト。お一人おひとりのこれまでの歩み、今の気持ち、大切なものを一緒にみつめ、分かちあうことを大切にしています。