【Interview】yucchino 上村幸野さん (1/3)

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鞄職人のご主人と2012年に立ち上げたという、神戸発オリジナルバッグブランドyucchino(ユッキーノ)。上質な天然皮革を使用したOTONA eco-bagを中心にすべて手作りのMADE IN JAPANという鞄作りへのこだわりを、ブランドディレクターの上村幸野さんに伺いました。

#1 鹿革のエコバッグから生まれたyucchino

── 2012年に神戸で創業されたきっかけは、どんなことだったのでしょう?

上村:実はyucchinoを立ち上げる前から、夫がバッグのデザインの仕事をしていました。アパレルメーカーにデザイナーとして入った後、その会社を離れてバッグを作っていて。

たまたま私の友人のバッグメーカーの夫婦に彼が作ったバッグを見せたら「フリーランスでバッグのデザインをやってみないか」と言われて。デザインしてサンプルをあげて、展示会で受注がついたものについては、中国で量産という形で。女性もののバッグなので、私もこんな鞄があったらいいなと一緒に考えていました。

── 香港が思い出の場所とおっしゃっていたのはそのお仕事の関係で?

上村:中国の工場で鞄を作るためのエージェントが香港にあって。最初の頃は日本で揃えた材料でサンプルを製作していましたが、生産時に中国では手配できないものもあり、中国で手配できるものを自分たちで買いにいくようになりました。

今から15年ほど前はオーストラリアやアメリカ、ヨーロッパからも香港の問屋街にきて、資材などを探していたんですね。その頃私は会社勤めをしていて、年2回夫が香港に行く時に休みをとり、一緒にありとあらゆる生地や金具をサンプルとして買い集めて、日本に持ち帰ってはデザインをあげるという日々でしたね。

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── 実際にご自身のブランド、yucchinoを立ち上げようとなったのはいつ頃ですか?

上村:今から5~6年ほど前にリーマンショックで景気が悪くなった頃、雑誌の付録にブランドとコラボしたような布バッグが流行って、ちょうど主人が作っていたような1万円前後のバッグを持つ層の女性がそのバッグに流れてしまって、バッグの売れ行きがかなり下がってしまいました。

ちょうど私も事情があって仕事を辞めていたことも重なって、生活の展開が見えないという感じになって、夫と2人で自分たちのブランドを作って販売するという方向性を探そうということになりました。

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── 実際に2012年に立ち上げるまでは、どのくらいの期間がかかりましたか?

上村:2011年の秋に話が出て、方向性を決めてから3か月かそこらかもしれません。革は国内で仕入れようと夫が探して、私は毎日OLの仕事もしながら、毎晩帰宅後にネットショップの準備をし、同時にお店に手づくりのカタログとバッグの現物を持って営業もかけていたら、あるところで法人になっていないと言われて、もう法人にするしかないかと訳もわからずにやったという感じですね。勢いって必要ですよね。

── 3か月かそこらというのは本当にすごいですね。オールレザーのエコバッグはどのように生まれたのでしょうか?

上村: yucchinoを立ち上げる前の仕事でも、欲しいなと思い浮かんだものを夫にデザインしてもらって、メーカーさんにデザインを買ってもらってはいましたが、その仕事では価格の関係でハンドルだけ革にしたり、キャンバスと革を組み合わせて作るようなバッグでオールレザーではありませんでした。

でも夫も革が好きで、香港でヨーロッパ製の革を扱っているところを探し当てていて、たまたまジャケットを作れたらいいなと買っていた鹿革が何枚かあったので、私も軽い革の鞄を作ってもらったんですね。元々肩がすごく凝るので、重い鞄はしんどいけれども付録についているようなエコバッグでは嫌だなという思いがあって。

その軽い革のバッグをすごく気に入ったので「他にも欲しい人がいるんじゃないかな」と思ったのと、ちょうど何か自分たちで立ち上げようというのが同時に発生して、この革のエコバッグが生まれました。

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Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve
2015年10月3日取材

【Interview】yucchino 上村幸野さん (2/3)

*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。

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