【Interview】yucchino 上村幸野さん (3/3)
鞄職人のご主人と2012年に立ち上げたという、神戸発オリジナルバッグブランドyucchino(ユッキーノ)。上質な天然皮革を使用したOTONA eco-bagを中心にすべて手作りのMADE IN JAPANという鞄作りへのこだわりを、ブランドディレクターの上村幸野さんに伺いました。
#3 一生の趣味として追求していきたい
── yucchinoさんのCOORDINATE BOOKにアップされている鞄と服のコーディネートがとても可愛くて、本当にファッションがお好きなんだろうなと眺めていました。
上村:COORDINATE BOOKはどうしたら売れるだろうかとはじめたもので、服も安いものばかりで夫には呆れられているんですけれども、高校の時からファッションが大好きで、アルバイトしたお金は全部使っていましたね。
小柄なので普通のサイズの服だとイメージどおりにならなくて、ここをもう少しこうしたらいいのにと何かと工夫して着ていました。好きなことを仕事にすると嫌いになるんじゃないかと思って、ファッションではない方向に進んだんですけれども。
── 結果として好きなファッションを好きなままで、今楽しくお仕事できているのかもしれませんね。
上村:本当ですね。ファッションの道に進んでいたら、どこかで嫌になっていたかもしれません。就職した会社も服装にはあまりうるさくなかったので、それも良かったのかなと。そのままずっと突き進んで、あんなファッションこんなファッションってしながら今このあたりにいるという感じです。
── そのファッション中で、バッグとはどのような存在でしたか?
上村:バッグは1つでいいというか、とにかく1つを使い倒すという方もいるとは思いますが、私の中ではもうコーディネート全体の一部ですね。色やデザインだけではなく、このスカートの時はバッグがこの位置にきて欲しいなとか、パンツの時はもうちょっと下にあった方がいいなとか、そのくらいオタクな感じです。
コーディネートの撮影はセッティングに時間がかかりますね。全て自宅で撮影しているので、床置きのものはソファのヘリに乗って真上から撮って。着用したものは玄関の壁一面が全身鏡になっているのでそこで。夫も服がすごく好きで、靴履いてから鏡をみたいっと玄関に全身鏡が。もう趣味ですね。
── 例えば今から10年後というと2025年ですが、こうしていたいという夢はありますか?
上村:「お店があったらいいのに」と言ってくださる方もいらっしゃいますが、今は実店舗を持とうとは思わないんですね。私たちは夫婦2人ですし、2人楽しく好きなことをやって、なおかつお客さんに喜んでもらえる仕事を続けるということが目標ですね。
大きな会社にしたい訳でもなく、誰かに引き継いで欲しいということもなく、本当に一生の趣味にしようという。夫は作ることがすごく好きなので、休みがなくても苦にならないし。私も休みの日にネットショップのメンテナンスやっていても構わないですし、時々街へ出て、服をみて鞄をみて「こんな色が出ているな」とか「こんな形が欲しいな」と言っているのがもう趣味ですね。
── 素敵なパートナー関係ですね。
上村:よく皆さん「仲がいいね」と言ってくださるんですが、これで仲悪かったら一緒にいなくてもいいと思わへん?と。仕事を一緒にしていると、どうしてもしょうもない細かい喧嘩もあるので、そんな喧嘩は減らしたいですね。
でも細く長くこの状態を続けられたらいいかなと思っています。ちょっと夢のない話で申し訳ないんですが、ただいつまでもできるといいなと。自分の年齢によってその時に欲しいバッグもまた違う形で降ってくるだろうし、いつまでも追い求められたらと思います。
取材後記
カラーバリエーションの豊富さに惹かれたyucchinoさんのバッグ。お話を伺う中で、ご夫婦共に本当にファッションが好きで、楽しみながらバッグ作りを続けていらっしゃることが伝わってきて、それがyucchinoさんのバッグの細やかなこだわりや豊かな色に繋がっているように感じました。「好きなことを仕事にする」というのは少し勇気がいるかもしれません。しかし上村さんご夫妻のように本当に楽しいと思えること、良いと思えることを追い求め続ければ、それはお客さまの喜びに繋がり、作り手の喜びとしてまた次の原動力になっていくのだなということを、改めて思いました。そんなyucchinoさんの魅力を、この記事をとおしてお届けできたらなと思います。
*yucchino Webサイト
http://www.yucchino.com
Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)
2015年10月3日取材
*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。