手製本『心友たち』(2020)

『心友たち』(2020)

今までの人生で出会った34人の「心友たち」との出会いの記憶を贈る手製本。
和紙で制作した3冊組の手製本を帯紙で包み、まえがきとあとがきをそれぞれ封筒に仕舞い、縁のある手漉き和紙の栞を添えて、ひとつの贈り物にしています。

memo
□ 封筒におさめたまえがき・あとがき
□ 手漉き和紙の栞
□ 作者のひと添えで仕上げる

data
210mm×150mm/54~58ページ 3冊組
洋紙・和紙/和綴じ(康煕綴じ)
2020年1月1日発行
綴じ 藤田理代 (michi-siruve

2014年の春から、ほぼ毎月お一人ずつ。「心友」との出会いの記憶を文章に綴り、花の写真とともに心友のみなさまへメールでお送りされていた「心友出会い紹介」。2019年の秋には33人分が揃うという節目に、その33人分の記憶を手製本に綴じ、心友お一人おひとりへ贈りたいというご相談をいただきました。

ご相談いただいたのは、2018年の秋ごろ。4年の年月をかけてお贈りされてきた原稿の束と「できればこの紙を使いたい」と手渡された手漉き和紙の紙片から、1年以上かけた本づくりの旅がはじまりました。

本のかたちを決め、原稿のリライトと心友のみなさまへの確認、花の写真の収集……なるべくご依頼主さまご自身の手で形にしてゆけるように委ねながら、わたしは“本の綴じ手”として、34人目の心友にも加わり本づくりの旅をご一緒しました。

まえがきや本の挿絵も、それぞれご依頼主さまから心友のみなさまへ相談されながら、少しずつ本の中へ。真っ白な本に、ご依頼主さまと心友のみなさまの人生が静かにおさまった大切な本になりました。

3冊組を40セットで計120冊。綴じ手としては綴じきるまで体が持つだろうかと不安になりながらの1年でしたが、何とか無事綴じることができました。

本はわたしの手元で仕上げるのではなく、ご依頼主さまのひと添えで本が完成するように。1冊ずつタイトルを貼り、まえがきとあとがきにそれぞれ縁のある印を押し、「謹呈」の言葉と手漉き和紙の栞を挟むという仕上げはご依頼主さまにお願いしました。長い長い旅でしたが、無事すべて仕上がりみなさまの手に届いたそうです。わたしも34人目の心友として、ご依頼主さまから手製本をいただきました。

本の完成後ほどなくしてコロナウイルス感染症が広がり、それまでの日々が大きく変わってしまいました。毎月この本のためにご依頼主さまと喫茶店のテーブルを囲み、原稿や手製本の試作を手渡しながら言葉を交わしていた日々は、もう遠い昔のようです。

でもこの本がわたしの手元に確かにあること。本が手渡されたそのあとも、ご依頼主さまと心友のみなさまの間で物語が広がり続いていること。「本を綴じること」そして「本を手渡すこと」から生まれ、育まれてゆくものを改めて教えていただいた本づくりの旅でした。この本に関わってくださったすべてのみなさま、本当にありがとうございました。

※本のまえがきを寄せてくださったのは、この本のご依頼主の恩師、上野千鶴子先生。上野先生がこの手製本についてブログで紹介してくださり、本に添えられたまえがきの文章も公開されています。

このページの内容