羊毛を使ったwool100%のフェルト作品をひとつひとつ手作りする、フェルト作家 jolie saison 29 菅原美季さん。兵庫県西宮市にあるアトリエで、羊毛や作品を拝見しながらじっくりお話を伺いました。
#2 究極のハンドメイド
── 羊毛の状態から作品が出来上がるまでの工程が知りたいのですが。
菅原:まず羊毛の塊を洗剤を使いながら手でほぐします。次にほぐした毛を型紙に縦で埋め尽くした後に横という風に、グラムも均等に縦横に置いて生地にします。
縫い目はないので、持ち手は開けたいと思ったところハサミで切って穴を開け、型を外して丸めてこねて、手を中に入れて押しながらバッグのマチを作ります。最後にお湯でこすると毛が縮んで分厚くなり完成します。例えば今バッグの下に敷いたものがこの作品の型紙で、かなり縮みますね。
── 型紙と手しか使わないというか、究極のハンドメイドですね。陶芸なども手で素材に触れて形作りますが、フェルトは何の道具もなく手だけでできるというか。
菅原:本当に「手」だけですね。毛と手だけでできますね。言われてみれば、究極のハンドメイドかもしれませんね。
昔から、モンゴルではテント、ロシアではブーツなど機能的な良さから使われてきた歴史があります。ティーポットカバーやスリッパも作っても保温性があって、あとは吸湿、放湿性にも優れていて蒸れなかったり、消臭効果もあったり。油があるので水に濡れても結構はじくんですよね。毛もたくさん種類があって、羊の品種によっても毛の硬さも違うので、作る作品によって変えています。
── 使う羊毛の種類によって、かなり変わりますよね。
菅原:マフラーならばメリノウールという細い毛の方が肌馴染みも良いのですが、同じの毛で帽子を作るとふにゃふにゃになるので硬い毛を選んだりします。髪と同様に羊毛も染めると傷むので、染まっていない毛の方がしっかりします。
特に黒色の毛糸は何度か染めるためにすごく弱っていて、思ったより縮まなかったりします。国産のものもありますけど、海外産のものも多いですね。ニュージーランドで買ってきたこともありました。
── ニュージーランドは羊毛を仕入れるために行かれていたんですか?
菅原:最初は語学留学で、ちょうどjolie saison 29を始めた頃に友人の結婚式で再訪して、アシュフォードという羊毛の大きな会社があるアシュバートンという町まで行きました。
アシュフォードの羊毛の色がすごく好きだったんですけど、その結婚した友人のご主人の知り合いがアシュフォードの社長さんと繋がりがあって、お話させていただけて。その時は羊毛に興味津々で、羊ばかり見ていましたね。
昔から海外の雑貨を見るのもすごく好きで、フランス、イギリス、イタリア、ベトナムなど旅したことがあって、今の作品にも、見てきた雑貨の要素が少しずつ混ざっているのかもしれません。
── 菅原さんの作品は色合いが独特で、何色と一言では言えない混ざりあった色合いもフェルトの魅力ですよね。
菅原:色は感覚ですね。模様というよりは色合いからインスピレーションを受けます。このボルドーのカバーも、中の方に黄色い毛を入れていたり、様々な色の毛を混ぜていますね。
その時々に表現したい色合いがそのまま作品になるという感じで。作っていて一番面白いところなので、そこをお客さまに気に入っていただけるととても嬉しいですね。
── 色合いの他にこだわっていらっしゃることはありますか?
菅原:長く持ってもっていただけるように、とにかくしっかりとした物を作りたくて、硬さにはこだわっていますね。革に負けないくらいのしっかりとした強度のあるものが作りたいなと突き詰めています。それに関してはまだ発展途上というか、自分のスタイルを確立させるまでに試行錯誤している状態ですね。
Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)
2015年10月3日取材
【Interview】jolie saison 29 菅原美季さん (3/3)
*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。