ZINE『lead-off man』(2025)

『lead-off man』(2025)
大輝くんの18年を見守り支えた、14名の専門職とご家族の寄稿文で紡いだZINE。
memo
□ 大輝くんの願いと18年間生きた証
□ 医療・教育・その他さまざまな14名の専門職とご家族とZINE作家で
□ 小児・A世代の患者と家族のこれからのために
data
book
T138mm×Y205mm/Interlockingtabalbum/PELP!
106P・ケース入り・栞つき
bookmark
120mm×40mm
2025年12月2日発行
企画・編集 スパコネ
綴じ michi-siruve
Special Thanks 寄稿者のみなさん















ZINE『lead-off man』にこめた想い
ZINEにこめた想い -依頼主 由美さんより-

まえがき
このZINEは、
【藤井大輝】という人間が
18年間、生きた証です。
息子は0歳で希少がんを発症し、
造血幹細胞移植を経て命をつなぎました。
それから15年の時を経て、
再び希少がんを患います。
見つかったときには
すでに厳しい状況でしたが、
【人生のアディショナルタイム】を、
最後まで全力で駆け抜けました。
言葉が思うように出なくなった頃
息子は静かにPCへ向かっていました。
後になって知ったのですが
それは自分の人生を綴った「日記」でした。
「生きた証」を残そうとしていたのでしょうが、
その記録は2022年11月で途切れていました。
自分の弱さや葛藤を抱えながらも
それを周囲に見せたくない、悟られたくない。
最後まで「がん患者」ではなく
「普通の18歳」として生きたかったのです。
死と向き合う日々の中で、
息子は常に「自分の存在価値」を
問い続けていました。
そして「自分の人生は自分で決める」と
強く決意し、多くの方の応援と支えのもとで、
彼なりの人生を全うしました。
「俺は俺、ママはママ」
そう、何度も私に言っていました。
その言葉は今も、あらゆる場面で
私の胸に蘇ります。
小児・A世代患者と家族の問題点の解決、
そして自分がいなくなっても
私が崩れてしまわないようにという、
彼なりの優しさが込められていたのだと思います。
このZINEの制作は、
そんな息子の志に触発されて始まりました。
彼の歩みの中で「解決できたこと」
「できなかったこと」を記録し、
今後に向けた課題解決の【種をまく】
一助となれば――。
そんな思いを込めて制作しています。
不安や孤独に押しつぶされそうになったとき、
私たちを救ってくれたのは 【話すこと】でした。
•たわいない話ができる相手がいること
•自分の話に耳を傾けてくれる人がいること
•誰かに相談できること
•不安な気持ちを言葉にできること
•応援してくれる人がいること
それは、どれも尊く、力強い支えでした。
息子が遺してくれたたくさんの【宿題】。
それを一つでも多く解決していくために、
これからも皆さんとともに
歩んでいきたいと願っています。
最後に、息子に寄り添い寄稿してくださった皆さま
そして私たち親子にずっと伴走してくださっている
共同制作者・藤田理代さんに、
心より感謝申し上げます。
母・由美より
本冊子は「寄稿」というスタイルを選びました。ひとつの答えにまとめるのではなく「言葉( ことば)」から広がるそれぞれの想いをそのまま残したかったからです。息子は話すことが大好きでした。関わってくださった多くの方々と「言葉」を交わし、その中でさまざまな表情を見せていました。 そんな息子と特に多くの対話を重ねてくださった皆さんに寄稿をお願いしました。
家族にも見せなかった一面や、ふとした「言葉」ににじむ想い、それらを「ことば」という形に留めておきたい。その願いから、この冊子が生まれました。綴られた言葉たちを通して、息子の「生きた証」と、そこに寄り添った人々の思いを感じていただければ幸いです。
ZINEにこめた想い -ZINE作家より-
タイトル

タイトルの『リードオフマン』は、制作をはじめて7か月が過ぎたころ、由美さんが閃いたタイトルです。
「一番バッター」をあらわす野球用語で野球でも実際に一番バッターで、治療も人生も自分で決めて、周囲を引っ張りすすんでいた大輝くんの姿勢や志をあらわす言葉。
この言葉をみちしるべに大輝くんとメッセージを寄せてくださったみなさんのことを想いながら制作しました。
紙と綴じ


紙は「PELP!」というオフィスから出た古紙を集めて漉きなおした再生紙で綴じています。
かつて誰かが生み出した文字や模様であった無数の紙たちが、星屑のように散らばった紙。寄稿者のみなさんが寄せてくださった文章の奥にある言葉にならない想いが星屑のように寄り添ってくれたらと、この紙を選びました。
1枚1枚にまったく同じものはなく、つまりはそれぞれの1冊が世界にひとつだけのオリジナルです。
綴じは「Interlocking tab album」という紙を1枚ずつ折って組み重ねてゆく綴じにしました。
「寄稿文」というかたちでバトンが渡されていく言葉たちを折り重ねてゆく製本の過程は、生きてきた日々を一緒に伴走するような時間でした。
シルエット


表紙と栞には、野球と陸上に打ち込む大輝くんのシルエットを載せました。
制作してくださったのはかげ作家の浅井郁さん。中学・高校時代の大輝くんの写真をお渡しすると、その写真をそのまま、表紙と栞にふさわしいシルエットにしてくださいました。
表紙は『lead-off man』のタイトルにふさわしい、打席に立つ大輝くんを。栞は駅伝の走者をつとめた大輝くんのシルエットで、ZINEに綴られた大輝くんの人生の物語を駆け抜け、読み手のわたしたちに伴走してくれるようなイメージでデザインしました。
ライン

表紙から裏表紙まで続く一本のラインは、大輝くんの歩んできた人生をあらわしています。
表紙はホームベースと白線に見立てて、人生の打席に立つ大輝くんを。寄稿文のはじまりとなる扉ページも、寄稿者お一人おひとりが同じ打席に立ってくださるイメージで、同じラインをおいています。
裏表紙まで途切れることなく続く線は、これからも大輝くんの物語は続くこと、わたしたちが大輝くんの志とともに生きるという気持ちをこめています。
扉とお返事
一人ひとりの寄稿文は、寄稿者の方が大輝くんにとってどんな存在なのかという由美さんからの紹介文からはじまり、最後は寄稿くださった文章に対する由美さんからのお返事で包まれています。
その由美さんのメッセージが、寄稿者のみなさんをつないでいます。
ケースと襷

ZINEを包む漆黒のケースは、大輝くんのファッションをイメージしています。
ケースにかけられたリボンは由美さんの制作で、駅伝の「襷」をイメージし、想いをつなぐという願いがこめられています。
由美さんが襷に寄稿者お一人おひとりのお名前を入れ、栞とメッセージを添え、ZINEに襷をかけてお贈りしました。
あとがき -綴じ手として-
あとがき
由美さんから
「大輝くんのZINEをつくりたい」
と相談を受けたのは
2024年12月29日のことでした
大輝くんが生きた証を
伝えてきた想いをかたちにしたいけれど
大輝くんが綴った文章は途中までしかないこと
続きを由美さんが書くことはできないこと
かといって、由美さんの視点だけで
大輝くんの人生を綴ることはできないこと
でも、大輝くんが懸命に発信していた志を
これからも伝えていきたいこと
いろんなことをおはなしするうちに
大輝くんの志を応援してくださった
このZINEの寄稿者のみなさんの
おはなしになりました
本当にたくさんの方々が
大輝くんの志を応援してくださったこと
お一人おひとりが、大輝くんにとっても
ご家族にとっても大切な存在であること
大輝くんからきいていた・きけていない
大輝くんとみなさんのエピソードや気持ちが
まだたくさんあるかもしれない
まずはみなさんから、大輝くんのことを
教えてもらうところからはじめましょうと
このZINEづくりがはじまりました
最初はどんなZINEなるのか
由美さんもわたしもわからない日々でしたが
みなさんが寄せてくださった
メッセージの一つひとつに灯されながら
少しずつ歩みをすすめてきました
タイトルの『リードオフマン』は
制作をはじめて7か月が過ぎたころ
由美さんが閃いたタイトルです
「一番バッター」をあらわす野球用語で
野球でも実際に一番バッターで
治療も人生も自分で決めて
周囲を引っ張りすすんでいた
大輝くんの姿勢や志をあらわす言葉
この言葉をみちしるべに
大輝くんとメッセージを寄せてくださった
みなさんのことを想いながら制作しました
寄せていただいたたくさんの言の葉から
育まれるものがあることを願いながら
心からの感謝の気持ちをこめてお贈りします
藤井家のご近所さん 藤田 理代
