2015-12-30

【Interview】森-温​(MORIHARU) 森田温子さん (3/3)

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失いたくない自然の美しさや、ふと感じる懐かしさ、わくわくしたい気持ちを描き続けるシルクスクリーンアーティストの森-温​(MORIHARU) 森田温子さん。サーフィンも愛する森田さんがよく訪れるという兵庫県明石市の林崎松江海岸で待ち合わせて、空と海の移ろいを感じながらじっくりお話を伺いました。

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#3 より環境負荷のかかからない、自分の信念に近づけた素材で

── ちなみに、原画はどこで描いていらっしゃるんですか?

森田:もっぱら寝る前に。もう何十年も日記を書いていて、習慣ですね。日記を書く時に絵も描いていて、後から見返した時に「あ、なんかこれ面白いな」と思って筆ペンで描いたものが作品になっています。

── 一日の終わりに描かれた絵が元になっているとは意外でした。言葉が添えられている作品があるのも、日記が関係していますか?

森田:自分が海で感じた感覚を表したり景色を切り取ったもの、新聞記事や言葉とかからインスピレーションを得ているものがあって、格言については今の日記帳にページ毎に格言がのっていて、そこから生まれています。例えば「monk seal」という作品は「日本の沿岸にあざらしがきた」という新聞記事が元になっていて。「へぇー来たんやーかわいいな」と。写真のない記事でしたが、ハワイかどっかから来たのかな、やっぱり海って繋がってるから来ちゃったのかなとイメージしながら。

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── そのお話を聴くと、あのアザラシがぐっと身近に感じます。表現する上で、大切にしていることや苦労されていることはありますか?

森田:まずシルクスクリーンは完成形というのがわかるようでわからないということですね。色のシミュレーションを行いますが、例えばオレンジの部分で1版、黄緑はこの線を描いて1版と作っても、それが実際に2枚重なりどうなるかはやってみないとわからないところもあり、それがすごく楽しくもありますね。

── 好みのお話でおっしゃっていた「日本的な色」を出すために、工夫されているところなどはありますか?

森田:旅をすると海外は原色で色がクリアで何を撮ってもきれいな一方で、日本の空港に降り立ったとたんにグレーがかっているなと。でもそれが自分らしさというか、この色は海外の方からすると珍しい色だろうなと思い、色を作る際は混色を大切に、どれだけ原色でもわずかに茶色や灰色を入れています。試行錯誤を重ねていざ紙にのせて乾燥させると結果「あれっ?」という色になることもあって、結局未だに完成形がわからないですね。

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── これから挑戦したい作品はありますか?

森田:作品で使う紙やインクなど、もっと環境負荷のかかからないやり方を見つけたりできたらなと。以前大雨の日にあるポイントに入りサーフィンをした時、海岸の横の川からの汚水で海がみるみる一面茶色になって、潜ると缶や木の枝も髪に絡まったりしたんです。街の地面の汚いものが全部海に流れて、川と海は繋がっているんだなと痛感しました。だからこそ自分の作品づくりでも、製造過程も含めて環境負荷少ないものを見つけられたらいいなと。たとえばサーフィン繋がりの友人が徳島で藍染めをしていて、藍染めの藍のような自然のものをつかったことができたら、環境負荷も減ってなおかつより土地の色になるんじゃないかなと。紙ももっと自分の信念に近づけた素材でやりたいなという想いはありますね。

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── 地域で生まれた色で地域の絵が生まれるというのはすごく素敵ですね。10年後、何をしているだろう、これはしていたいということはありますか?

森田:海辺には住みたいですね。そして環境負荷の少ない方法を自分でみつけて、制作を自分の利益だけではなく、利用してもらえるようになりたいです。例えばパタゴニアのように、売り上げの1%を環境保全に役立たり、環境負荷の少ない形で製品を作っているという理念にすごく共感していて。ただそういう作家さんは既にたくさんいらっしゃるので、自分は住む土地の色や文化、手仕事をのこすために利用してもらえる作家でありたいなと。たとえば、ふたや箱などの余り物が出るもの、いわゆるデッドストック的なものを再利用できないかなとか。そして環境保全に役立てるように使ってもらいたいし、自分もそういうのも使いたいなと思いますね。それをするにはもっといろんな人と繋がって、シルクスクリーンアーティストとしてはもちろん、もっと活動の幅を広げてデザイン方面の仕事も挑戦していきたいです。

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取材後記

作品についてのお話を伺う中で、何度も「残したい」とおっしゃっていた森田さん。「自然は大きいけれど、脆くて変化してしまうからこそ残したい」と語る言葉にとても説得力がありました。実際に旅をする中で感じた土地ごとの色やその時だけの景色、波乗りをする中で感じる空や海の移ろいや、そして四季の変化を愛おしく思う気持ち。好きだからこそ、残したい。そんな森田さんの想いを、この記事をとおしてお届けできたらなと思います。

*シルクスクリーンアーティスト 森-温​(MORIHARU)  森田温子さんのWebサイト
http://www.moriharu.net/

Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)
2015年9月13日取材

*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。

michi-siruve (みちしるべ)
“記憶”を綴じるZINE作家。「掌の記憶」を綴じながら、日本のまちを巡っています。>>詳しくはこちら
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