失いたくない自然の美しさや、ふと感じる懐かしさ、わくわくしたい気持ちを描き続けるシルクスクリーンアーティストの森-温(MORIHARU) 森田温子さん。
サーフィンも愛する森田さんがよく訪れるという兵庫県明石市の林崎松江海岸で待ち合わせて、空と海の移ろいを感じながらじっくりお話を伺いました。
#1 好きな感覚を共有するもの
── 森田さんは美術の先生をしながらシルクスクリーンアーティストとして創作活動を続けてこの春に独立されたそうですが、昔から何かを描いたり作ったりということはお好きでしたか?
森田:思い返すと小学校の頃、習字の半紙を半分に切って重ねてホッチキスで留めたような新聞をつくって友達に5円くらいで売っていました。中高でも好きだった漫画やゲームをテーマにした同人誌をつくっていましたね。
「作って売る」というやりとりが好きだったのかもしれません。商売をするというより、やり取りが楽しいんですよね。
── 誰かと共有するものを作っていた、というような感覚でしょうか?今サーフィンをしながら海やサーフィンをテーマにした作品づくりをされていることも通じるものがありますね。
森田:当時作っていた同人誌も、そのゲームが好きな人と、好きな感覚を共有するようなものでしたね。今の作品もサーフィンを好きな方はすごく共感してくださいます。
絵をずっと描き続けたいという想いはあって、滋賀大学教育学部美術科へ進みました。先生だから幅広く経験しなさいということで、美術の勉強はかなり自由にさせてもらいましたね。その中でシルクスクリーンの実習もあり、とても楽しかったんです。
── 幅広く経験された中で、シルクスクリーンのどのようなところが面白かったのでしょうか?
森田:元々印刷物が好きで、版画も好きで個人的に木版や銅板もずっとやっていました。
大学の授業では油絵やデッサン、デザインといったものもあったのですが、その中でもシルクスクリーンは描いた線がそのまま美しく出て、ベタ面がぴしっと出るところがもう堪らなくて。インクを変えると色違いも刷れる。
今思い返すと昔からプリントゴッコも好きで、お正月のたびに使っていました。あれも孔版でシルクスクリーンと一緒なんですよね。プリントゴッコやカタログなど、当時好きだったものは今でも大切にとってあります。
── 作家活動は先生をされながらをはじめられたそうですが。今振り返って、影響を受けた方はいらっしゃいますか?
森田:まず大学時代は研究室の先生でもある彫刻家の宮崎豊治先生。私が4年間で先生に褒めてもらったのは一度だけで、あとは厳しく指導していただいた記憶ばかりですね。でも先生に「ずっととにかく続けたらいいよ。好きなこと、やりたいことをとにかく続けなさい」と言われたことがあって、それは今でもずっと響いています。
今制作のアトリエを使わせてもらっているKAVCで制作を補助してくださる林正樹さんにもとてもお世話になっています。私が2005年に本格的に作家活動を始めた頃から、様々な作家さんの仕事のお話を伺ったりといつも教わっています。
そもそもKAVCを知ったのは小学校で教諭をされながら作家活動をされていた先輩に教えてもらったのがきっかけなんですが、その方も今教師を辞めて制作1本でされていて刺激を受けますね。
Interview,Writing,Photo :藤田理代(michi-siruve)
2015年9月13日取材
【Interview】森-温(MORIHARU) 森田温子さん (2/3)
*このインタビュー記事は、2015年にWebマガジン「LABEL JOURNEY」で掲載していた記事を再編集したものです。