2018-11-25

【Report】「いのちの物語をつむいで」

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2018年11月16日(金)~18日(日)の3日間、NPO法人愛逢さん主催の「第13回生と死を考える市民講座『いのちの物語をつむいで』~ことば・絵本・音楽の視座から~」に、ZINEの展示と、講演会のゲストの一人として参加させていただきました。

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11月16日(金)、17日(土)の2日間は「みなくる☆そのだ コープさんとこ」にて、講演会のゲストでもあるいびら工房の吉田ご夫妻と作品を並べて『ことばと絵本の「いのちの物語」展』を開催しました。

会場のみなくる☆そのだは、昨年コープ園田さんの2Fにオープンした地域のみなさんが集い、学べる“くらしの拠点スペース” 。明るい木目調の空間に壁一面の大きなホワイトボード、授乳室にもなるキッズスペースもある明るい空間です。くるりと振り向けば生活用品が並ぶ暮らしの場ともつながっていて、買い物に訪れた方の目にも留まり、気軽に立ち寄られていました。

今回は2日間の短い展示。3日目は講演会の会場に展示を移すというスケジュールもあり、元々あるテーブルと椅子、ホワイトボードだけを使ったシンプルな展示構成にしました。

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テーブルを3つずつ使い、会場の左半分がいびら工房さん、右半分がmichi-siruve。

それぞれ、活動をはじめてから今日までの制作物を並べ、患者・家族として制作にこめた想いや変化も含めて感じることのできる構成に。ホワイトボードには取材記事やポートフォリオなど、活動全体の軌跡が伝わるように展示しました。

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奥のテーブルには、講演会の特別講演のゲストである音楽療法士  佐藤由美子さんの著書『ラスト・ソング』や『死に逝く人は何を想うのか 遺される家族にできること』、主催のNPO法人 愛逢のスタッフの方がセレクトされた書籍を並べて読み物コーナーも。

シンプルなかたちでしたが、地域の方々も含めて本当にさまざまな方々がご来場くださり、本を読んだりお話をしてくださったり、それぞれの時間を過ごされていました。

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『あなたの家にかえろう』(いびら工房)

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いびらのすむ家』(いびら工房)

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ベッドからの手紙』(いびら工房)

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がんって、なに?』(いびら工房)

inochi20181116-10ゆきちゃんとみんな 』(いびら工房)

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アキちゃん~であい~』(いびら工房)

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余白をたのしむ小さな手製本」*以下(michi-siruve)

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左から『かぞくのことば』『母のまなざし』「 Portfolio」

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otomo.

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掌の記憶

inochi20181116-15汀の虹

いつもは家の中で、ひとりで黙々と本を綴じているわたしですが。綴じた本を抱えて街に出ると、不思議な出会いや再会がたくさんあります。

今回の展示も、大学時代に死生学を教わった大切な先生が来てくださったり。愛逢の家のスタッフのみなさんをはじめ、医療や福祉に携わる方々も、日々接している一人ひとりのことを思い浮かべながらおはなししてくださったり。本を囲んでおはなしを聴いたりおはなしをしたり、忘れられないことばにたくさん触れた2日間でした。

一番驚いたのは、展示をみに来てくださっていた吉田ご夫妻のご友人。「もしかして……」と尋ねてみたら、16年前、今は亡きわたしの祖父が入院&通院していた病院でリハビリを担当してくださっていた理学療法士さんでした。

当時わたしは高校生で、その方はその病院で働き3年目くらいだったそう。病院では家族としてやりきれない想いもたくさん経験したけれど、その先生はいつも祖父を祖父として尊重しながら向き合ってくださっていたので、ずっと覚えていました。

あれから16年、数えきれないほどの患者さんやご家族と向き合ってこられただろうに。祖父のことやその経過も家族のこともとても細やかに覚えていてくださって、思わず涙がポロポロと。

自分のがん経験も、同時期に亡くなった祖母のことも、涙を流さず語ることができます。でも活動の原点にある祖父の記憶だけは、今でもやっぱり涙が止まらない。祖父のことを覚えていてくれる人との再会は、ことばにできないくらい嬉しい。そんな自分に改めて気づかされました。祖父が倒れて16年、他界して10年。「ようやく辿り着いた」というような言葉が浮かぶ、意味を感じずにはいられない偶然の再会でした。

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そして最終日の11月18日(日)は、園田地区会館に会場を移し、講演会「第13回生と死を考える市民講座『いのちの物語をつむいで』~ことば・絵本・音楽の視座から~」。20代から70代まで、年齢もお仕事も暮らしている町も、さまざまな方々がお集まりくださいました。

最初に話題提供として、わたしは「ことばの立場から」というお題をいただき、がんを経験してからはじめたZINEの制作活動についておはなししました。

わたしは、経験を整理して見つめなおすためにことばを使っていること。そして本に綴じること、手渡し想いを交わすことをとおして、少しずつ納得してゆく術として向き合っていること。一方で、ことばの難しさも日々感じていて。自分が置いたことばが、誰かの心を苦しめるかもしれないと自問自答しながら向き合っていること。だからこそ、さまざま経験をされている方々の声を聴き、できる限りの想像力を働かせてことばを置いていることなどをおはなししました。

続いて「絵本の立場から」吉田利康さんと恵子さんご夫妻が、いびら工房として制作されていた絵本の制作活動についておはなしをされました。

それぞれ、がんで配偶者を亡くされた経験を持つ中で出会い家族となり「いびら工房」として、2009年から「生きるを考える絵本」をテーマに、数々の絵本を制作発行されているお二人。文章を利康さんが、絵を恵子さんが担当されています。次の世代に伝えるために絵本という表現を選ばれていること、その表現に辿り着くまでの経緯や、これから先にのこしていきたい物語のことまでお話しされていました。

そして特別講演として「音楽の立場から」ホスピス専門の音楽療法士 佐藤由美子さんの講演「ラスト♪ソング」~人生の最期に聴く音楽~が1時間ほど。ホスピスや在宅で音楽療法をされている様子をおさめた番組の映像や、佐藤さんの生演奏も交えながらのおはなしでした。

「音楽」の持つ力。そして音楽療法士として、確かな理論や経験をもって、五感を研ぎ澄ませて目の前の患者さんやご家族を見つめ、耳を澄まし、その方々が生きる力を引き出してゆくこと。その様子を、聴き手のわたしもまた五感で感じながらのひとときでした。

最後に主催のNPO法人愛逢 西山さんの司会で、小さな座談会もありました。時間に限りがあり、ひとまわりずつとことばを交わしたようなかたちでしたが…ことば・絵本・音楽それぞれの力もあれば、共通するものもあり。患者・家族・支援者という立場の違いがありながらも、共通していている想いもある。そんなことを会場のみなさんとも共有したひとときでした。

講演の詳しい内容は、あの場をともにしたみなさんとの記憶として心にしまっておきますが、ひとつだけ。佐藤さんのおはなしの中で忘れられないことばがあり、最後に記しておきたいと思います。

「本人が、自ら答えを見つけることができる」
英語ではこれを「エンパワーメント」と言います。

わたしたちセラピストの役割というのは、
本人が見出すことができる環境をつくること。

自分の人生の答えを、自分で見つける。
それを支えるということ。

「エンパワーメント」ということばは、大学で福祉を学びはじめた時から、大切なことばとして教えられてきました。でもどこかでずっと、そのことばの力を掴みきれていない自分がいました。

それは単にことばとして理解できなかったという以上に、静かに死へと近づいてゆく祖父とともに生きていた患者家族として、わたし自身が答えを見つけることができない状態だったからなのかもしれません。

でも、佐藤さんの声の響きとともに、2018年の今改めて「エンパワーメント」ということばを聴いた時、すっと納得できた自分がいました。

それは音楽療法士として「自分の人生の答えを、自分で見つける。それを支える」ということを大切にされている佐藤さんから届いた声だったから。

そして、がん患者として、また同時期に大好きだった祖母と育むはずだった小さな命を失った家族としての経験から、自分のことばとまなざしで自分の手で本を綴じながら、微かながらも掴んできたものがあったからなのだとも思います。

それは家族としての経験から絵本の制作を続ける吉田ご夫妻もまた感じられたことだとおっしゃっていて、会場で聴いていらっしゃったみなさんも、深く頷いていらっしゃいました。

「自分の人生の答えを、自分で見つける」

簡単なことではありませんが、見つけるためのひとつの術として、さまざまな表現がある。そして、答えを自分で見つけるサポートをすることが、ともに生きる人たちにとって必要なことだということを改めて自覚することができた貴重な時間でした。

このレポートには書ききれませんが、西山さんからこの企画にお声がけいただいたのがちょうど1年前。

準備期間も、展示・講演会中も、そしてそのあとの振り返り会や来場者のみなさんからいただいたアンケートも含めて、たくさんのことばに触れ、さらに深く感じ考えるヒントをたくさんいただきました。それらのことばと向き合いながら、これからも制作や活動を続けていきたいと思います。

秋という忙しい時期に展示や講演会にお越しくださったみなさん、そして吉田ご夫妻、佐藤さん、主催のNPO法人愛逢のみなさん、本当にありがとうございました。

そんなこんなで展示と講演会を無事終え、体調を崩さず2018年の大きなお約束守ることができてほっと一息。年内の企画としては、残すところ12月15日(土)「記憶のアトリエ」です。たくさんの記憶とともに、また新しい記憶との出会いをたのしみに、のんびりお待ちしていますね。

記憶のアトリエ in トコテコ紙芝居小屋

[日時]2018年12月15日(土)11:00〜16:30 ※入場無料(ランチや本づくりをされる方のみ実費)
[場所]トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市売布(めふ)阪急宝塚線の清荒神駅から徒歩10分、売布神社駅から徒歩12分くらい。少し坂道なので歩きやすい靴がおすすめです)
※お越しくださる方はオーナーのけいこさんかmichi-siruveまでご連絡ください。詳しい住所をお伝えします。
※先着順ですが、1台ほどお車を停めるスペースもあります。

>>お知らせ 「記憶のアトリエ」in トコテコ紙芝居小屋

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Schedule

Exhibition / Event  / WS
12.8 「とよなか産業フェア」@豊中市立文化芸術センター(大阪府豊中市)

記憶のアトリエ
5.27 「記憶のアトリエ」in 幸ハウス(静岡県富士市)
8.12 「記憶のアトリエ」in 音川 (富山県富山市)
11.3 「記憶のアトリエ」in 幸ハウス(静岡県富士市)
12.15 「記憶のアトリエ」in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)

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