「5年後の手紙」

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「5年後の手紙」
~5年の節目に綴じる、小さなことばの花束~

1年以上前から考えていた手製本。そのはじまりの文章が、ようやくまとまりました。

1冊の手製本を綴じたくて、その本の名前です。今から5年後に贈る手紙ではなく、あの日から5年後に届く手紙。それを5年の節目に綴じる、小さなことばの花束のような本にしたいと思っています。

詳しくは、今から続く文章を読んでいただけたら。わたしの想いをお手紙のように綴りました。

この文章を読んで、もし何か浮かんだことばがあれば、わたしに預けていただけませんか?大きな花束や、華やかな花束をつくりたい訳ではないんです。ことばの色も手触りも、あなたが届けたい、でもなるべくあなたのことばそのままでいただけたらうれしいです。

この5年のうちにわたしと出会ったあなたのことばもうれしいです。

この「5年後の手紙」の文章を考えながら見つめていたニゲラの花の写真と、同じく文章を考えながら仕立てていた封筒や木の葉のハートの写真を添えて、贈ります。


2019年、春。29歳だったわたしが絨毛がんを公表したあの日から丸5年が経ちました。あの時、公表したメッセージを読んだ人からたくさんのことばが届いたことは昨日のように覚えています。

メールやSNSで届いたメッセージもあれば、封筒におさまり届いた手紙もあり、写真にことばが添えられたフォトブックもあり。お菓子の缶に油性マジックで描かれたメッセージ。羽1枚1枚にメッセージが綴られた千羽鶴。花束に添えられたカード…

当時みなさんからいただいたことばは、育むはずだったいのちを失い、空っぽのお腹で吐き続けながらベッドに沈んでいたわたしに、もう一歩踏ん張る力をくれました。

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気が付くと、あの日から5年が経ちました。当時は、次の春自分が生きていることも想像できなかったわたしですが。それからの5年もまた、想像もできなかったような日々でした。

失ったという実感と、元通りにならない心と体にくるしみ、ことばにできない想いを抱えながら。それでもことばを置き、ひたすらに本を綴じ続けた5年だったように思います。そんなわたしと出会い、今日まで見守ってくれたみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。

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この数か月、自分が綴ったものを辿りながら5年間を振り返っていました。振り返ってみると、公表したあの日が一番たくさんのことばを受けとった日だったようです。

文章というかたちで残っていたことばたちは「確かに交わした」と印として、自分の道のりを辿りなおす道しるべになりました。

一方で、ことばにならなかった日々の記憶は、その日自体が存在したのかもわからないくらいでした。何か何だかわからぬまま、少しずつ薄れ、その輪郭も道のりも見失い。さらに何か大切なものを失ったような気がして、そのことに気づくたび、かなしい気持ちにもなりました。

「紡ぎ、紡がれたことばがある」ということは、大切なものを失った記憶を引きずるわたしにとって、そのあとを生きるのに必要なのかもしれません。

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少し話を戻して、5年前交わしたことばについて。

今想うと、当時交わしたことばの奥には、お互いことばにできなかった想いがたくさんあるようにも感じています。そのあとの5年間、交わせずにいた想いもたくさんあるようにも。5年前は出会っていなかったけれど、そのあとに出会いことばを交わしてきた人もいます。

5年という節目。この日を迎えることがとても想像もできなかった日。

そんな今、この節目に綴じたい本があります。本の名前は「5年後の手紙」。今から5年後に贈る手紙ではなくて、あの日から5年後に届く手紙。それを5年の節目に綴じる、小さなことばの花束のような本です。

その「ことば」とは、この5年で綴じてきたような「わたしのことば」ではなく、わたしのまわりにいる「あなたのことば」です。

若くしてがんになったひとりが、5年という月日を生きてきて。そのまわりで見守ってくれていた人、その途中で出会った人はどんなこと感じてこの5年を生きていたのだろう?その心の声に触れることのできる、小さな手製本を綴じたいなと思ってます。

わたしへのメッセージというよりは、わたしに出会い、わたしの言動に触れて思い浮かんだあなたの気持ちや記憶を手紙にこめていただけたら。

いただいたお手紙から、わたしは1冊の本を綴じあなたに贈りたいと思っています。具体的には、あなたからいただいたお手紙に浮かぶ“ことばの花”から一輪を選び、それを真っ白な本の1ページ、1ページに綴じてゆきます。あの町、この町で暮らす人のことばを一輪ずつおさめ、ひとつの花束のような手製本にできたらなと。

まわりで見守る人の心の声を、小さな花束に。それぞれの孤独の間で何かを交わすきっかけになるような、小さな花束を綴じたいのです。

こんな想いもことばでは中々伝えずらくて、相変わらずもどかしいのですが。この文章を読んで、もし何か浮かんだことばがあればわたしに預けていただけませんか?

大きな花束や、華やかな花束をつくりたい訳ではないんです。ことばの色も手触りも、あなたが届けたい、でもなるべくあなたのことばそのままでいただけたらうれしいです。

そのことばに触れながら、触れ方も相談しながら、一緒に小さなことばの花束を綴じてゆけたらと思っています。丁寧に触れ、丁寧に触れていただけるかたちを考え、読み手の顔が見えるささやかな空間で必要な人の手に触れるように。そんな気持ちでこの文章を書いています。

お手紙の今日の時点でのイメージは、花の写真の下に記しています。制作する中で変わる部分もあるかと思いますので、都度ご相談させていただきます。何か質問などあれば、お気軽にメッセージください。こんなに長い文章を、最後まで読んでくださりありがとうございました。

最後に、この「5年後の手紙」の文章を考えながら見つめていたニゲラの花の写真を贈ります。

手紙について
[su_accordion][su_spoiler title=”①手紙の書きかた” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]横書きの便箋でお送りください。手書きでもタイピングでも書きやすい方で。たった一言でも、何枚でもうれしいです。[/su_spoiler] [su_spoiler title=”②手紙の送りかた” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]郵送か手渡しで。2019年6月30日で、治療を終えてちょうど5年なので、その時期を目安にいただけるとうれしいです。それより後でも、もちろん大丈夫です。[/su_spoiler] [su_spoiler title=”③手紙のそのあと” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]いただいたお手紙からことばを掬い上げ、本に綴じます。どのことばを掬い上げるかはわたしに委ねていただけませんか?本というかたちでお贈りします。綴じた本は夏以降、展示というかたちで本を手にとってくださった方にも触れていただく予定です。[/su_spoiler][/su_accordion]

2019.5.6

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