「深淵」#掬することば


Flowers 「ユーカリ」×「コアラファン」(2017.10 花店note)
2月4日の「World Cancer Day」に向けて、豆本詩集『汀の虹』の詩を、1日1篇ずつ置いています。7篇目は一.深淵の「深淵」です。
ひとつ前の「沈む」の詩で綴ったとおり、音もなく沈んでゆくような感覚のあった病室の記憶。 風も流れもなく、あらゆるものが淀んでいる。そんな空間でした。
でも「底まで沈んだ」という感覚はなくて、むしろ底が見えないくらいに真っ暗な深淵にいるような。ついこの間までの時間は、もう戻れないくらい彼方に遠のいていて、元気だった頃の自分にはまったく想像もつかなかった世界に居ました。
そのときの道を失ったような感覚は忘れられないし、今もことばにすることは難しくて。「深淵」ということばの“深さ”にこめて、短いですが置きておきます。
しんえん【深淵】
(デジタル大辞泉)
1 深いふち。深潭 (しんたん) 。
2 奥深く、底知れないこと。
ふち【淵】
(デジタル大辞泉)
1 底が深く水がよどんでいる所。
2 容易に抜け出られない苦しい境遇。苦境。
『汀の虹』のみちしるべ
『汀の虹』は、がんによる孤独の中で握りしめていた“ことばの欠片”を道標に制作しています。握りしめていた“ことばの欠片”の大半は、それまでの人生で大切な人から贈られたことばや、何度も触れた本や音楽、映画のことばでした。
そこからことばをひとつ手にとってはタイトルとして置き、心の奥に沈んだ治療前後の記憶を一つずつ掬い上げ、重ね綴っています。この本や歌、映画の中にあることばや情景をみちしるべにしていたような…という作品のタイトルだけ、最後に添えていきます。(以下、敬称略)
「深淵」
『ニーチェの馬』タル・ベーラ

