【Report】#ミニアトリエ「きむらとしろうじんじん 野点」

12/2(土)豊中市内の原っぱで開催されたイベント「きむらとしろうじんじん 野点 in 豊中東部」の屋台メンバーの一人として、本づくりの体験ができるミニアトリエをひらきました。

きむらとしろうじんじんさんの野点とは!??(豊中市役所のイベント案内ページより)

陶芸お抹茶屋台としての「野点」
大・小2台のリヤカーに、陶芸釜・素焼きのお茶碗・うわぐすりなどの陶芸道具一式と、お抹茶セット一式を積んで、街のさまざまな場所に現れ、お茶碗を焼いてお茶が飲めるカフェを開きます。お客さんはその場で素焼きのお茶碗に絵付けをし、楽焼き(らくやき)という方法で40分程で焼きあげられた自作のお茶碗でお茶を楽しむことができます。

令和5年度 きむらとしろうじんじん 野点(のだて)

2018年に屋台メンバーとして初参加した、豊中市内の公園で開催されたじんじんさんの野点。絵付けをしたお茶碗が焼き上がるまでの1時間弱、お客さんが会場で待つ時間もたのしめるようにと屋台メンバーがそれぞれ得意なことを持ち寄りいろんな屋台をひらきます。

わたしは、普段は病院や地域でひらいている本づくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」の道具や素材を並べてミニアトリエをひらきました。

屋外のオープンなアトリエ、子どもたちもたくさん遊びに来るイベントだからこそ立ち会うことができた自由な表現や本との関わりとてもたのしいアトリエでしたが、その後は感染症流行の影響もありここ数年は参加できず。

ようやく感染症の混乱も落ち着いてきた今年の野点。2018年もご一緒したくるくる工房さんや豊中市内で度々交流のあった「コト⇄コト」さんも出店されると伺い、久しぶりにご一緒できたらなと。各所にご相談をして、飛び入りでくるくる工房さんの隣でささやかなアトリエをひらかせていただけることになりました。

5年ぶりのオープンなアトリエ。前々日になって保管していたはずのレジャーシートが行方不明になっていることに気づいて大慌てでしたが「コト⇄コト」さんが大きなシートを貸してくださり、くるくる工房さんが木陰のとっておきの場所にシートを敷いて迎えてくださり、運営スタッフさんが作業台に使えるBOXを貸してくださり。

お隣の方からは途中クッションシートやチェアもお借りして、みなさんのおかげさまで、原っぱの木陰の下に思いがけず作業台つきの立派なミニアトリエをつくることができました。

今回は屋外でのアトリエなので、小さくてページ数も少ないささやかな手製本を。本づくりの過程で出た端紙で作った豆本や棚の奥に眠っていたサンプルを中心にお持ちして「記憶のアトリエ」の本づくりの素材たちも並べて、いつもよりもささやかなぶん無料で体験していただけるかたちにしました。


12月の極寒の原っぱ。アトリエに立ち寄ってくださる方はいらっしゃるだろうかと不安だったのですが、じんじんさんの野点をたのしみに市内外からお越しになった方はもちろん、ご近所さんや市役所の職員さんと、この場所の管理を担われている職員さんなどいろんな方がお越しくださり、michi-siruveのアトリエもくるくる工房さんのアトリエも、終始にぎやかな時間が流れました。

いつの間にか作業台にぐるりと子どもたちが集まり、寒さに負けず、自由な制作。

「何したらいいん?」「どれで描いたらいいん?」
「春が描きたい」「封筒も使っていいん?」

子どもたちのちいさな問いや声にならない問いに耳を澄ませ、一つずつ一緒に見つめて考えます。子どもたちがたくさんだと手が足りませんが、そのうちにそれぞれの世界に入っていったり、子ども同士で相談したり協力したり。創作の種が育まれていく瞬間に立ち会うことができるアトリエの時間は、やっぱりとっておきです。

迷いなくピンクのクレヨンを手にとりぐいぐいと描き「ぶたちゃん!!!」と教えてくれた子。青、黄、赤…と彩り豊かなマーカーを手にとり黙々と線を重ねる子。シールの山からお菓子のシールを山盛りみつけて本にコレクションしていた子。

「春夏秋冬にしたい」と、春のページに貼る桜のシールを探す子に「桜、さっき見たで!」と一緒に探してくれる子。最初は本選びからじっと考えていたのに、気づくとにぎやかなアトリエの隅っこで静かに丁寧に虹色のお花を描いていた子。

アトリエの周りにも「持ち帰って本づくりができたら」と手製本や素材を丁寧に見つめて選んでくださる方や、「掌の記憶」や「ココロイシ」などmichi-siruveが過去に制作したZINEを読んでくださる方も。こんな風に、みんなが思い思いに集う景色の中にいるのは久しぶりで、とってもしあわせでした。

虹色のちいさな封筒が連なる手製本を見つけて、封筒の中に一つずつお気に入りをしまっていた女の子。封筒の中に隠れているお気に入りを当ててもらう豆本が完成しました。中を全部ひらいて一つずつ答えを見せながら「これ絶対全部当てられへんよな!」とにっこり。一番のお気に入りはしっぽだけ封筒から飛びでていた猫ちゃんだとか。

とっても可愛かったので「本の写真、撮ってもいい?」と聞くと「いいけど、全部ひらいてるのは載せたらあかんで。答えが分かっちゃうから」と条件付きで許可をいただきました。全部ひらいていない写真だけここにも置かせていただきます。

そして、今回のアトリエで一番時間をかけて制作してくれた世界で1冊だけの「すいちょくびよくずかん(垂直尾翼図鑑)」。アトリエの隣で「原っぱから見える飛行機についてリアルタイムで解説してくれる」というライブ感溢れる屋台をひらいていた飛行機が大好きな男の子がつくってくれたZINEです。

大好きな気持ちが詰まった彼の解説がとっても素敵だったので「飛行機のZINEつくってくれない?」と頼んでみると、快諾していただけました。選んでくれたのは、縦長の蛇腹豆本。飛行機の中でも特に好きだという各機体の「垂直尾翼」を、クレヨン一つでぐんぐん描き進めてくれました。

「この青ある?」
「どれどれ?お、かっこいいね。こっちの青とかどうかな?」
「いいね!」

「カンボジアに行った時に乗った飛行機の色がとってもかっこよかったんだけどわかる?」
「ベトナム航空だね」

「ヨーロッパも何かないかな?」
「せっかくだから六大陸制覇しようよ!」
「オーストラリアは日本でもお馴染みのあれがあるよ!」

「その本めちゃめちゃ長いから、無理して全部頑張らなくてもいいよ」
「ううん、最後まで描く」

「JALは?」
「JALは難しい
「最後にJAL描く」

国や色を一つずつ一緒に探しながら、世界旅行のような本づくりの時間。南極以外の5大陸・19機もの垂直尾翼図鑑を描きあげてくれました。

その時間がとってもたのしくて本もとても力作だったので、お願いして1ページずつ撮影させていただき「記憶のアトリエ」にもレプリカを1冊置かせていただくことに。「大好き!」がつまったこのZINEは、きっとこの本の読み手の「好き」や表現の呼び水になってくれると思います。

アトリエを覗いてくださった方に完成した本を見せて「乗ったことがある航空会社はありますか?」と尋ねると、中にはほとんど乗ったことがあるという世界中を旅した方も。最後にはじんじんさんにもこの図鑑をみせて、たのしいアトリエの時間の締めくくりとなりました。

真冬の原っぱで3時間近くかけてこの世界で1冊のとっておきを完成させてくれたこと、本当にありがとうございました。

(本文ママ)
デルタ航空、ANA、大かん航空、アシアナ航空、S7航空、ベトナム航空、ブリティッシュエアウェイズ、スクート、ジップエア、エバー航空、ガルーダインドネシア、エチオピア航空、ジェットスター、ヴァリグブラジル航空、アリクリア航空(※アリクエア航空)、チャイナエアラインズ、中国東方航空、中国南方航空、JAL

そんなこんなで、寒空の下でも心がポカポカだった5年ぶりのオープンなミニアトリエ。お世話になったじんじんさんや市役所の職員さんをはじめ野点や屋台のスタッフのみなさん、そして参加できるように背中を押し、助けてくださった「コト⇄コト」さんと「くるくる工房」さん、本当にありがとうございました。

お越しくださったみなさん、助けてくださったみなさん、そして野点を運営してくださったすべてのみなさんに感謝しながら、2023年のしあわせな記憶として綴り置かせていただきます。

また来年も、ぜひお会いしましょうね。

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