2020-10-09

神戸新聞「本は自分の道しるべ」掲載

2020年9月26日(土)の神戸新聞朝刊にて、10月25日(日)にNPO法人チャイルド・ケモ・ハウスさんと開催する「あのねカフェ」についてご紹介いただきました。

前半は「あのねカフェ」を主催するチャイルド・ケモ・ハウスさんへのインタビュー。後半が今回のカフェで本づくりの講師を勤めるmichi-siruveへのインタビューという二部構成で、紙面いっぱいにとても丁寧にご紹介くださいました。

紙面のみの掲載のためご紹介できないのが残念ですが、記事の一部分だけぼんやりと撮影しました。雰囲気だけでもお届けできたらと思います。

そしてお礼の気持ちも込めて、今回取材してくださった神戸新聞の中島摩子さんとの出会いについて綴りのこしたいと思います。

掌の記憶」(2015)

2015年からmichi-siruveとして続けている、依頼者から“大切な記憶”を預り豆本におさめて贈る「掌(てのひら)の記憶」というプロジェクト。そのWebサイトに中島さんから一通のメッセージが届いたのは、2020年7月7日のことでした。

感染症の流行で今までの当たり前がひっくり返ってしまった春が過ぎ、それでも今できることを模索した展示「記憶のアトリエ」-2020年夏、blackbird booksで- を終え、一区切りがついた頃。がんになる前まで働いていた古巣の制作会社への復帰も決まり、大きな節目を迎えていた時期でもありました。

「記憶のアトリエ」-2020年夏、blackbird booksで-(2020)

メッセージには、中島さんが神戸新聞で2019年5月から「いのちをめぐる物語」というテーマの年間シリーズを続け、生と死、看取りや終末期ケア、グリーフケアなどについて取材、特集を担当されてきたこと。特集の読者のみなさんから届いたたくさんのお手紙を読みながら考え続ける中で、わたしの活動を知り、お話を聴きたいとご連絡くださったことが綴られていました。

「記憶のアトリエ」-2020年夏、blackbird booksで-(2020)

中島さんが担当されていたその特集は、わたしも偶然読んでいました。手製本の活動の寄付先でもある認定NPO法人マギーズ東京の秋山正子さんがインタビューを受け、記事をシェアされていたのがきっかけでした。

第1部 死ぬって、怖い?(8)患者が自分を取り戻す空間

メッセージをいただき、改めて特集記事の1~19までと読者からのお便りを読みました。そこに登場されるお一人おひとりの声、何よりもその声の主を見つめる中島さんのまなざしを感じる文章に、わたし自身も今まで出会ってきた方々の声も呼び起こされ、引き込まれながら読んでいました

そしていくつかのやりとりを経て、一か月後の8月8日にお会いするお約束を。「その頃にはどんな世界になっているんだろう?」と、お互い想像もできない日々を過ごしながらその日を迎え、自宅アトリエにお越しくださりお会いすることができました。

atelier

michi-siruve atelier

あちこちに散らばったわたしの今日までの足あとを辿り、知ってくださった上での取材。遡ること1995年。わたしが阪神・淡路大震災後間もない西宮に越した10歳の春の話からはじまりました。

高校生の頃に祖父が寝たきりになり大学で社会福祉を学ぶ道に進んだこと。福祉の専門職ではなく「想いを形にする」力をつけようとメディア制作の道に進んだこと。その道半ばで祖父が他界したこと。今の活動、本というかたちの原点でもある記憶を、一つずつ聴いてくださいました。

祖父の新聞社時代の部下だった方から在りし日の祖父との記憶を綴った手記を受けとり、わたしも「一人ひとりの記憶を形にしてつないでいく活動をしよう」とZINEの制作をはじめたこと。その矢先に妊娠性絨毛がんという希少がんを患い、流産、がんの治療、祖母の死を同時に経験したこと。

治療後、祖母との最後の約束を果たすために、祖母の遺品を手製本に綴じて個展をひらいたことがきっかけで「大切な記憶を綴じる」活動がはじまったこと。そこからの活動の広がり、忘れられない出会い……今までの人生の切実な記憶に触れることは、全部お尋ねくださったような記憶があります。

そして何より、アトリエにある手製本とそこに宿る記憶にも丁寧に触れ、感じてくださっていました。

この丁寧にともにする時間こそが、中島さんの記事に宿るまなざしなのだと感じながらの取材でした。

記憶のアトリエ」(2018-)

取材を終えまたひと月ほど経った頃、中島さんからまたメッセージが届きました。

取材の最後にお話した、コロナ禍の中でできるかたちを…とNPO法人チャイルド・ケモ・ハウスさんと相談しながら開催する「あのねカフェ」の紹介記事として、チャイルド・ケモ・ハウスさんへの取材との二部構成で掲載してくださるとのこと。

そしてその文章の最後には、問いが添えられていました。

「本をつくることの良さ」

「本だからこその良さ」

それはひと月前の取材でも、最後にお尋ねくださったことでした。

もう一度その問いをくださった意味を考えながら、心落ち着けてことばにしました。そのことばを記事の結びに綴ってくださっていましたが、そのお返事自体を記憶にとどめておきたくて、ここにもそのお返事をそのまま置いておきます。

一般的な「本」(出版物)というよりは、自分でつくる1冊だけの「手製本」というくくりですが…ひとつは、ひとりでも安心して表現することができる場所だなと思います。

今までの人生を振り返ると、何か大変な出来事に直面したり、日々に追われていたり。今日を生きることに精一杯という状況になると、今自分が感じていることを表現することが難しくなるという経験が度々ありました。

そんな時、あのねカフェさんのように「あのね」といえる場所、聴いてくれる人がいる空間が、わたしにとっては手製本だったという感じです。

日常から少しだけ離れて、これまでのこと、今のこと、これからのことを見つめ、本に綴り残したいことを、真っ白な本の1ページずつにそっと置いてみる。

手製本はどんな表現でもそっと受け止め抱いてくれますし、そこに静かな一筋の流れ、物語が生まれます。物語を得ることで、自ら語る、声にする、ということがしやすくなったことがありました。

とはいえ、SNSや出版物のように、知らない誰かに見られたり批評されることもなく、伝えたい時は手渡したい相手にだけそっと手渡せばいい。そっと、安心して表現できる場所だなと思います。わたしが感じる「手製本をつくることの良さ」かもしれません。

もう一つは、いつでも触れなおすことのできる自分の足あと、みちしるべのようなものとして残ることかなと。

日々に追われていると記憶の網目からこぼれて消えてしまうような記憶の欠片も、本に綴じれば確かなものとして残ります。

読み手は未来の自分かもしれませんし、身近な誰かかもしれません。  誰かにそっと手渡せば、何かしら触れて、感じてもらうことができ、誰かと想いを交わし合うきっかけにもなります。

1年後、10年後、自分で読み返した時に当時の自分と再会したり、<今の自分の変化に気づくこともあります。本が在ることでつなぎなおすことができたもの辿ることができた足あと、たくさんある気がします。

これが「本だからこその良さ」なのかなと思っています。文章なのに端的にできなくてすみませんが、今の気持ちです。

世の中の大きな変化を目の当たりにし、個人的にも大きな節目を迎えた2020年夏。

そんなひと夏をかけて今までを振り返り、これからを見つめるきっかけをくださった中島さん、本当にありがとうございました。これからも、中島さんのまなざしで綴られる記事をたのしみにしています。

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記憶のアトリエ
※安心して開催できる状況になるまで、アトリエの開催はお休みしています