2020-01-05

「開(ひらく)」#掬することば

(この文章はnote「掬することば」からの転載です)

今から14年前、大学4年生のお正月から何となく続けている今年の一文字。「澄(すむ)」という2019年を経て迎えた2020年は「開(ひらく)」という一文字に決めました。

ひら・く【開く】

㋐閉じふさがっていたものがあけ広げられる。あいた状態になる。
㋑花が咲く。
㋒物事が始まる。業務が始まる。
㋓二者の間に差ができる。隔たり・差が大きくなる。
㋔わだかまりがなくなる。
㋕力のためがなく、姿勢の向きがすぐ変わる。
㋖開票が始まる。

㋐閉じふさがっていたものをあけ広げる。
㋑畳んであるもの、閉じてあるものなどを広げる。
㋒物事を始める。業務を始める。また、金融機関に口座を設ける。
㋓未開拓の場所・土地などに手を入れて利用できるようにする。開拓する。開墾する。
㋔あけて道をつくる。道をゆずる。
㋕よい方へ向くように努める。
㋖隔たり・差を大きくする。
㋗わだかまりなどを取り去る。包み隠してあるものをなくす。
㋘身をかわす。
㋙知識を授ける。啓発する。
㋚会などを催す。
㋛数学で、平方根・立方根を求める。また、括弧 (かっこ) 付きの式を括弧のない形に変える。
㋜原稿の、文章中の漢字をかなに書きなおす。
3 忌み詞で、終わる、逃げる。
4 盛んにする。
5 疑わしいことを解明する。
(デジタル大辞泉)

「開(ひらく)」に決めた。「決めた」という、わたしにしては強いことばを選んだのは、今年が阪神・淡路大震災から25年という節目の年だからです。

もう幾度となく綴り語ってきた記憶ですが、わたしが「死」つまり「生」というものを初めて意識したきっかけが、25年前祖父母の暮らす町で起きた阪神・淡路大震災でした。

生まれ育った故郷・花小金井を離れ、祖父母の暮らしを再建するために越した震災後間もない町。10歳の終わりの春、そこで目の当たりした大切な人や風景が「失われる」ということ。そして、失われた「そのあと」を生きてゆくということ。

瓦礫や更地、手向けられた花を見つめながら沈黙に耳を澄ませた日々と、その町で季節が一周した春に聴いた『花 -Memento-Mori-』という歌の“心の中”と“永遠なる花”ということばが、その町でそのあとを生きる家族や友人たちと暮らしてゆくわたしのみちしるべでした。

失われたそのあとも、心の中に咲かすことができる花。「そんな花、あるのかな」と、25年近くその歌を心で聴きながらずっと考えてきました。

その間に震災を生き延びた家族を見送り、がんになり自分の体の中に授かった大切ないのちと自分の未来を同時に失い……自分自身もさまざまな「そのあと」を生きる中で、改めてその歌やたくさんの花たちと向き合いました。

そして、“本”と“記憶”ということばのもとにさまざまな「そのあと」を生きる人たちとともに過ごす中で、11歳のわたしが握りしめた種からようやく芽が出てきたような気がしています。

2020年は、そのひとつのしるしとして、夏頃に小さな手製本の展示をひらきます。さまざまな“大切な記憶”をおさめる、小さな手製本の展示。

“本の記憶” “花束の記憶” “音楽の記憶” “食の記憶” “服の記憶” “秘密の記憶”……どのくらい形になるかはわかりませんが、わたしや誰かが本に綴じて大切に持っておきたい記憶にふさわしい手製本を、1冊ずつ考えています。

年が明けて最初に綴じたのが、この『blackbird』という手製本。“本の記憶”をおさめる掌サイズの手製本です。2羽のblackbirdが向き合うように仕立て、お花のようにふわりとひらくと7羽のblackbirdたちがさえずります。

わたしの綴じる手製本は、どれも“本”と呼べるほどかっちりとしたものではないささやかな手製本です。手製本というより、“大切な記憶”がお花のようにひらく小さな小さな“永遠なる花”。その方がしっくりきます。そんな小さな花を、1輪ずつ手渡してゆく営みのようなもの。

それがわたしにとっての手製本で。記憶の持ち主それぞれの“大切な記憶”をおさめるのにふさわしいリズムや流れ、手触りの手製本を仕立てて“記憶の花”がひらくためのお手伝いをすること。それがわたしが残りの人生をかけてやっていきたいことです。

2020年は“記憶の花”を贈る1年に。そんな気持ちをこめて、「開(ひらく)」という一文字を置きたいと思います。今年も「記憶のアトリエ」や展示、それぞれの場所で、本と記憶とともにお待ちしています。

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おとどけ「あのねカフェ」本づくりの講師*オンラインにて 10/25予定

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記憶のアトリエ
※安心して開催できる状況になるまで、アトリエの開催はお休みしています