「自由」#掬することば

「自由」#掬することば

来週東京で『記憶のアトリエ』をひらくので
わたしが人生で初めて出会った
ずっと大切に持っている宝物のZINEを
少しだけ持っていこうと
引っ張り出して読み返していました


今から33年前の1992年
生まれ故郷の東京都小平市にある
小平市中央図書館が発行していた
『としょかん こどもきょうどしりょう』という
小学生向けに郷土資料室の資料から

小平にまつわるさまざまなテーマを
ほぼ司書さんの手書きで編集し
色紙にモノクロのコピー機で印刷して
折られただけの小冊子

当時8歳だったわたしですが
子ども心にこの本を作った人は
この町や歴史や本が大好きで
知識や教養はその子の人生や
この町の未来を豊かに育むのだと信じて
それをまっすぐ子どもたちに
伝えようとしてくれているのが伝わってきて

どんな百科事典よりも
作り手の「わたし」が伝わってくる何かがあって
手にとるだけでわくわくしました

図書館の貸し出しカウンターの横に
全シリーズが並んで
無料で配布されていて
全部読みたいけれど

図書館に行く時は母や妹と一緒だから
図書館内でゆっくり読むことはできなくて
無料とはいえあれもこれも
持ち帰るのは気が引けて
いつも悩んで悩んで
1冊ずつ持ち帰っていたら

ある日司書さんが
「もうなくなっちゃった巻もあるから
 読みたいのは全部持って帰っていいよ」
と声をかけてくださって
あるだけ持ち帰ったのがこの冊子たちです

その中でも一番心動かされたのは
『戦争と小平』の巻でした

当時も薄々、今読みなおして強く感じるのは
この冊子には「戦争はいけないことだ」とか
「これからこうすべきだ」といった
大人からの考えの押し付けが極力排除されていること

史実を伝えるパートも
「日本史」のまなざしではなく
「世界史」のまなざしで書かれていて

世界史という引いた視点からはじまり
小平の町に何があって何が起きたのか
戦争中の東京の家族
何より自分と同年代の子どもたちが
どんな日々を過ごしていたのかと
ぐっと寄った視点まで
限られた紙面に考え抜かれた構成で

読み進めるうちに
子どもにとっては知らない遠い時代の
かつ「いけないこと」として
大人から一方的に押し付けられるような
教わり方も多かった「戦争」というものを
自分のまなざしと感性で
とらえるきっかけに

何よりも、これからを考えるために
一番大切なことは
自分の目で見て耳で聞いて
自分で考えることなのだと
気づくきっかけになった1冊でした

内容は

  • 日本が太平洋戦争につきすすむまで
  • 戦争の年表
  • 戦時中のスローガン
  • 1945年8月15日までの出来事など
  • 戦争と東京の家族
  • だから多摩も襲撃された!小平市周辺戦争当時軍事施設・軍需工場マップ
  • 戦争中の子どもたち

もちろん、編集された司書さんのまなざしで
編まれた内容なので偏りはあるし
司書さんの戦争への想いというのは
芯としてあるのですが

最後のページには
司書さんからのこんなメッセージと
ポール・エリュアールの
『自由』の詩の一節が添えられていました

今回「としょかん こども
きょうどしりょう」にのせた戦争の話は
ごくかいつまんだ説明なんだよ。

ひとつの方向からだけ見ないで
いろんな本を読んで
たくさんの人から話を聞いて
戦争って何なのか考えてね。
だって今ぼくたちは
自分で 自由に考え
自分の思ったことを 自分の言葉で
伝えていけるんだから


『としょかん こども 郷土資料館 No.10 戦争と小平』(1992年2月12日 第2版発行 編集・発行 小平市中央図書館)より

ひとつの方向からだけ見ないで
いろんな本を読んで
たくさんの人から話を聞いて
何なのか考える

そんな、ものごとと向き合う姿勢を教えてくれたのは
この小冊子を制作された
故郷の図書館の司書さんなのかもしれません

なんだか胸がいっぱいになって
掬することばとして、書かずにはいられませんでした


それにしても
図書館だからできることかもしれないけれど
市立の図書館で子ども向けに戦争を届けるというのは
校了するまでも発行後も
色々あったんじゃなかろうかと思います

でもこのシリーズ、大人になって読み返しても
テーマ選定も含めて本当に生き生きしていて
編集者の方はもちろん、責任者の方も
すてきな人だったんだろうなと想像します

ご存命だったら、この小冊子を抱えてお会いしてみたい

ずっと大事に持ってましたよ
この小冊子に触発されて
社会の授業のノートを
ZINEのようにまとめるのがお決まりになって

いろいろあって今はいろんな人の記憶や想いを
ZINEに綴じる活動をしているんですよと

そんな創作のたねをくださった司書さんに
心からのありがとうございますも添えて

これからもひとつの方向からだけ見ないで
いろんな本を読んで
たくさんの人から話を聞いて
何なのか考えていきたいと思います

じゆう【自由】コトバンク

1 自分の意のままに振る舞うことができること。また、そのさま。「自由な時間をもつ」「車を自由にあやつる」「自由の身」
2 勝手気ままなこと。わがまま。
3 《freedom》哲学で、消極的には他から強制・拘束・妨害などを受けないことをいい、積極的には自主的、主体的に自己自身の本性に従うことをいう。つまり、「…からの自由」と「…への自由」をさす。
4 法律の範囲内で許容される随意の行為。

コトバンク