2019-01-19

「滲む」#掬することば

Flowers 「ブルーローズ」(2017.9 花店note)

 

2月4日の「World Cancer Day」に向けて、豆本詩集『汀の虹』の詩を、1日1篇ずつ置いています。13篇目は「滲む」です。


時間が経つほどに増してきた、大切なものを失った「かなしみ」。

それは「湧き出る」というものでもなく「溢れる」というものでもなく「押し寄せる」というものでもなく。「生きる」という浅瀬に何とか踏みとどまっていたわたしにとっては、「流される」という感覚も「溺れる」という感覚もなく。

その時の心のディテールをことばにすることは、今でも難しいですが。「滲む」ということばの響きが一番馴染むような気がします。

色でいうと、このブルーローズのようなかなしい青。この青は、薔薇に染料を吸い上げさせてつけた人工の色だそうです。でも、そのことも含めてこんな青だなと感じるし、この青に惹かれるわたしがいます。

穴なら塞いだはずなのに、気がつくと滲んでいる。どこが穴なのかもわからないけれど、塞ぐということ以外に術をもっていない。

解決するという意味では、他にも方法はあったのだろうけれど。たとえもう一周しても、そのときのわたしにはそうする他なかったような気もしています。

最後に添えているのは、いつかの夜に街の映画館で観た作品。映画館でしか観れないあの青と、あの空気の手触りをふと思い出しました。

にじむ【滲む】
1 液体が物にしみて広がる。
2 液体がうっすらと出てくる。
(デジタル大辞泉)

『汀の虹』のみちしるべ 
『汀の虹』は、がんによる孤独の中で握りしめていた“ことばの欠片”を道標に制作しています。握りしめていた“ことばの欠片”の大半は、それまでの人生で大切な人から贈られたことばや、何度も触れた本や音楽、映画のことばでした。

そこからことばをひとつ手にとってはタイトルとして置き、心の奥に沈んだ治療前後の記憶を一つずつ掬い上げ、重ね綴っています。この本や歌、映画の中にあることばや情景をみちしるべにしていたような…という作品のタイトルだけ、最後に添えていきます。(以下、敬称略)

「滲む」
七里圭『眠り姫』

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