2020-11-20

「憶」#掬することば

(この文章はnote「掬することば」からの転載です)

一昨日の真夜中のこと。何だか急につらい記憶が波のように押し寄せて、とある閉じた場所に後ろ向きな気持ちの波を泣きながら書き綴っていました。

どうしようもなくつらかった時のこと、失った未来のこと。そこから立ち直ることができない自分と、道づれにしてしまっている周囲への申し訳なさ……。その日誰かに何かを言われた訳ではなくて、積もり積もった記憶がふいに押し寄せてくる。

流産とがんの治療が同時に押し寄せた6年前から、ずっとこの調子です。

しんどくて昨日今日はずっとイヤホンで耳を塞いで何とかやり過ごしていたら、1時間ちょっと前、スマホの画面にピコンと小さなしるしが灯りました。イヤホンを外して、灯りの方へ。

「あ、今日だったんだ」と思う間もなく、女の子の声が語る記憶が自分の記憶とシンクロして、そのあとに続く音楽の響きに涙が溢れて止まりませんでした。何度も何度も聴きました。

深い悲しみを思い出すのに、何故だかじんわりあたたかい気持ちになる。真っ暗闇の孤独を思い出すのに、向こう側で心配してくれている人のまなざしに気が付く。

これまでも、つらい記憶がぶり返す音が耳に刺さると、決まって耳を塞いで目を閉じて逃げ込んだ小さな静寂の中で彼らの音楽を聴いてきました。

あたたかな響きでそっと包み、 潰れた心を少しずつ押し広げ、耳を塞ぐ手を解き、響きを分かち合う喜びを思い出させてくれる。

孤独の中の悲しみや苦しみと地続きの響きで、絶ち切れてしまった過去の自分と今の自分、そして同じ音楽を聴く誰かとの今を繋ぎ直して、繋ぎ止めてくれるような。

独りぼっちの静寂では塞ぎこむだけなのに、そこに音楽が響くととたんに何かが変わる。わたしにとって音楽とは、そんな存在です。

「Every moment has its music」
「Every music has its memory」

かれこれ11年使い続けている、すっかりボロボロになった古いウォークマンが灯すメッセージと、そのメッセージを見る度にわたしの心に灯るメッセージ。

忘れられない瞬間も、忘れたくない瞬間も、聴いてきた音楽がそっと抱き、聴く度に思い出させてくれる。永く聴き続けていた歌も、新しく届く歌も、どちらもあるから今をもう少しだけ生きようと思う力になる。

震災翌年の春、初めて彼らの歌を聴いた11歳の春も、授かったいのちも明日を生きる保証も失い空っぽのお腹で吐き続けた6年前の春も、そして今日までずっと。絶ち切れる度に、何度も繋ぎ止めてもらったなぁと。よなよなそんなことを思っています。

忘れたいけれど、やっぱり忘れたくない。今日もまた、ほんの少しだけ力がわいてきました。あと少し生きようと思える力を、いつもありがとう。

【おく】
①おぼえる。忘れない。
②おもう。おもいだす。
③おしはかる。
(大辞泉)

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