【Report】「第5回 AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会」登壇

2023年5月14日(日)、昭和大学上條記念館で開催された第5回 AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会のシンポジウム3「AYA世代がん患者のアドバンスケアプランニング」に、AYAがん経験者として登壇する機会をいただきました。

座長は上智大学グリーフケア研究所・認定NPO法人マギーズ東京・駒込病院緩和ケア科の栗原 幸江さんと富山大学附属病院・富山AYA世代がん患者会Colors代表の樋口 麻衣子さん。

演者は医療者の立場から、大阪国際がんセンター 血液内科・AYA世代サポートチームの多田 雄真さん、兵庫県立がんセンター 看護部の伊藤 由美子さん、静岡県立静岡がんセンター・マギーズ東京の福地 智巴さんの3名。そして患者の立場からの1名にお声がけをいただきました。


最初にこの登壇のご依頼をいただいた時、患者として「アドバンスケアプランニング」を経験していないわたしにお話できることがあるのか、とても戸惑いました。

ただ、今回わたしに声がかかったのは、これまでさまざな研修会や講義等でお話してきた、患者としての「いえないいたみ」(言えない・癒えない)の体験……ACPよりも手前の、がんと診断されてからの患者自身が考え、語り、周囲と共有してゆくことや折り合いをつけてゆくことの難しさについての体験だとお話を伺い、それであれば少しはお話できるかなと、悩みながら内容を考えました。

がん患者になった日を境に、突然押し寄せてくるさまざまな変化や情報をすべて受け止めながら、次から次へと決断を迫られること。心や体が弱ってゆく中、限られた時間の中で患者が自ら今の気持ちやこれからの希望を見出し、意志を決定して言葉にすることの難しさ。

さらには、産婦人科という生と死のコントラストが強い環境で流産からのがん治療を受けるつらさや、時間のない中多くの患者の治療に尽力されている医療者の方へ遠慮してしまう気持ち。そして患者の回復を望む周囲に、前向きになれない本音を伝える難しさ。

「言えない」からこそ「癒えてゆかない」もの。そんな「いえなさ」を抱えたわたしの「これまで」や「今の気持ち」を一緒に見つめてくれた専門職の関わりで、少しずつ「言える」ようになり、自らの「これから」を見出し「癒えて」いった日々のこと。体験からお話できる範囲でお伝えしました。


本当は、講演の最後に添えていた「いえない」を抱えているのは患者だけではないと感じたということもしっかりお伝えしたかったのですが、12分という短い時間ではお伝えできることに限りがあり、患者目線の一方的な語りになってしまったのではないか、切実な体験を語るにあたり最後に少し言葉に詰まってしまったこともとても申し訳なく思っています。

きいてくださった方々からは「いかに言葉にし難いか」ということが伝わる時間だったという感想もたくさんいただきましたが、患者のそばに居る方々もまた、もしかするとそれ以上にそれぞれがいえない何かを抱えています。

そのことも患者なりに感じ、重ねてきた関わりがありますが、自分のこと以上に語りづらいゆえ、限られた時間の体験談では触れないことも多いです。でも触れなければ、なかったことのようになってしまうことも今回痛感しました。

患者の経験を主張することではなく、それぞれの立場にある方がお互いの抱えているものを分かちあい、それぞれの立場にある方の助けとなる思いやりの種を育むこと。そのためには、「患者であること」の矢印も自覚して、自分の語りのあり方も含めてもっともっと考えなければいけないと強く感じた登壇でもありました。力不足もあり申し訳ない気持ちでいっぱいですが、それはきちんと「これから」につなげていきたいです。


決して得意ではない「体験を話す」という行為ですが、それでもいただいた依頼は引き受けて悩みながらお話するのは、大学時代にソーシャルワーカーの恩師から学んだ教えてが根底にあります。

当事者が抱える「いえなさ」をしっかりと理解したうえで、目の前の一人と関わること。その人自身が表現し、答えを見つけてゆくその過程をサポートする人としてのあり方。そんなあり方をともに考え、今治療のさなかにあるみなさんにとって支えになる思いやりを育んでいく一助になれたら。その根底の想いを大切にこれからも一つ一つのご依頼と向き合っていきたいと思います。

今回お声がけくださったみなさん、お聴きくださったみなさん、本当にありがとうございました。これからも一つひとつのご依頼に精一杯向き合いながらできることを重ねていきます。

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