ZINE『ホスピタアートを考えるその前に』(2023)

ZINE『ホスピタルアートを考えるその前に』(2023)

2022年秋に登壇したトークセッション「ホスピタルアートを考えるその前に」での登壇者の語りを綴じた手製本。
登壇者3名が持ちあう私家版の手製本として綴じました。

memo
□ 掌からあふれる記憶
□ 語りあった3人で振り返る
□ 3色の綴じ糸

data
265mm×185mm/69ページ+表紙
洋紙・和紙・トレーシングペーパー・おりひめ/和綴じ(変型)
2023年4月11日発行
綴じ 藤田理代 (michi-siruve

2022年11月、HITO-IROプロジェクトの川西真寿実さんが主催された企画展「ホスピタルアートinギャラリーIV」内のトークセッションひとつ「ホスピタルアートを考えるその前に」。その登壇者のお一人でもある緩和ケア医の儀賀理暁さんからのご依頼で、トークセッションと「そのまえ」から「そのあと」までも含めた記憶を綴じた、私家版の手製本を制作しました。

掌からあふれる記憶

ということばとともに、いただいた制作のご依頼。トークセッションのテキスト起こしがきっかけではじまった製本で、イベント企画者の川西さんにもご相談しながら、登壇者3人だけが持ちあう手製本として綴じることになりました。

トークセッションでの登壇者の語りを中心に、企画段階で交わしたメッセージやセッション中の印象的なことば、その後の振り返りの時間で交わしたメッセージなど、会場の写真も交えて「ことば」や「景色」がふわりと浮かび上がるような構成に。余白、紙の候補や綴じ糸、綴じ方……依頼主の儀賀さんに少しずつご相談しながら、本の流れやリズムをイメージしながら、かたちを考えてゆきました。

印象的なことばは、そのことばが生まれた景色の写真とともに透ける紙の表現を借りて浮かび上がらせたり。扉と奥付には3年前に仕入れていた「おりひめ」という平和記念公園の折り鶴が漉きこまれた虹色の紙片がちりばめられた紙を使ったり。トークセッション登壇者で持ち合えるようにと、儀賀さん、川西さん、藤田分の3冊綴じ、綴じ色は3名それぞれの作品などを想起させる、虹色、若葉色、桜色にしています。

持ち主の心の本棚に仕舞うようなささやかな手製本ですが、企画展やトークセッションというかたちで「ともにした時間」を製本という過程を通してともに見つめなおし、持ちあうという時間はとても豊かなものでした。

日々多くの人とさまざまなことに取り組んでいると、どうしても「すること」に追われてしまいますが、「したことをともに振り返ること」も大切にしたい。そんなことをあらためて感じた本づくりの時間でした。

儀賀さん、川西さん、そんな豊かな時間をありがとうございました。

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