【Report】ゲストスピーカー @金城学院大学 人間科学部 コミュニティ福祉学科

2019年7月18日(木)、金城学院大学 人間科学部 コミュニティ福祉学科の「ソーシャルウーマン総論」と「現代社会問題」のゲストスピーカーとして、それぞれの講義でおはなしする機会をいただきました。

声をかけてくださったのは、関西学院大学 社会学部 社会福祉学科で社会福祉を学んだ同級生でもある、金城学院大学の橋川健祐先生。橋川先生が関西学院大学に在籍されていた2017年にも「キャリアデザイン(社会保障と企業)」という講義に呼んでいただきましたが、金城学院大学でもまた声をかけていただきました。

学生時代に患者家族としての葛藤から現場実習を諦め、社会福祉士の道からも外れてしまった専門職でもないわたしが大学でお話なんて…と最初はただただ恐縮していたのですが、大学でもかつてのわたしのように福祉専門職の道には進まない学生さんもいらっしゃること。だからこそ、社会福祉の学びと一般企業での仕事を通して得たスキルをもってコミュニティの中で活動する一例として学生に届けたいと声をかけていただきました。

2017年に関学でご依頼をいただいた当時は、「大学の講義」という場でおはなしするのは初めてのことでした。他のゲストスピーカーの方々はわたしよりうんとキャリアを重ね、福祉との結びつきもわかりやすい方ばかりだったこともあり不安しかなかったのですが「今までのこと、そのまま伝えてくれたらいいよ」という橋川先生のことばに背中を押されて、とにかく素直に等身大の足あとを届けました。

患者家族として福祉に学びを求めた在学中の学び葛藤。卒業後一般企業で経験を積んだこと。がんの治療を経てはじめた「大切な記憶」を綴じる活動について……今振り返るといっぱいいっぱいだったなぁと思うのですが、その一歩がきっかけになり、他の大学の先生からもお声がけをいただくようになりました。

教養と看護」での連載や「記憶のアトリエ」など医療や福祉に関わる専門職の方々の協働など活動の幅も広がり、橋川先生の最初の一声には感謝しかありません。

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記憶のアトリエ」in 静岡(2018.5.27)

その橋川先生が金城学院大学に移られた縁で、今回2つの講義のゲストスピーカーとしてお声がけいただき名古屋まで伺いました。

ひとつ目の講義は、コミュニティ福祉学科の1年生が受講する「ソーシャルウーマン総論」。橋川先生と同じコミュニティ福祉学科の原田峻先生の講義でした。

「ソーシャルウーマン」とは、金城学院大学のコミュニティ福祉学科で大切にされていることば。社会に積極的に参加し、多様な地域住民とともに、すべての人々が幸せに暮らすことができる社会をつくる一人に育って欲しいという想いがこめられているそうです。

「ソーシャルウーマン総論」の講義も、実際にコミュニティで活躍されている女性のおはなしを聴く中で、学生一人ひとりが身近な社会課題へのアプローチや将来のキャリアについて考えてゆくというもの。ゲストの一覧を見るとみなさんそれぞれ異なる領域のご専門でコニュニティの中で活躍されていて、わたし自身が「お話を聴いてみたいな」と感じる方ばかりでした。

その中で、福祉専門職でもなくどこかの企業や団体への所属もないフリーランスというのはわたしだけ。体力が許す範囲の活動なので大きなことは言えませんが……資格や所属がなくても「コミュニティの中で自分なりの切実さと術を持って、目の前の人や出来事と関わりながらともに生きる」一例としてお届けできたらと、今までの等身大の足あとをお話をしました。

お話のあとも、みなさんしっかりと聴いて考えた質問をしてくださり色々と受けとるものの多い時間に。わたし自身が学生時代にゲストスピーカーの方々から受けとったように、いつか芽が出て花ひらく考える種のようなものが、学生のみなさんにも一つでも手渡せていたらうれしいなと思います。

もうひとつゲストスピーカーのご依頼をいただいたのが「現代社会問題」。橋川先生の講義です。身近な生活と社会問題に行政はどう関わってるのか、どんな課題やジレンマがあるのかということを講義を中心に学んでゆく内容だそうです。

この講義では、若くしてがんを経験したひとり、つまりはひとつの社会問題の当事者として感じてきたことをお話をしました。ひとつ前の「ソーシャルウーマン総論」を受講している学生さんも多いということで、内容がなるべく重ならないように振り分けながらの構成に。

最初にがん患者・家族・遺族・友人のひとりとしての経験から記憶に残っている光景やことばをいくつか紹介しました。次に視野を広げて「情報」から見つめるという題で、国としてのがん対策の歴史や取り組み、統計から見るがんの現状、問題・課題として聴く事柄について。最後に「ひとりの声」から見つめるという題で、その問題・課題にアプローチしているさまざまなソーシャルアクションの事例をご紹介しました。

メディア制作に関わるひとりとして、「伝えること」というのは「どう届くかという着地に向けてことばを選ぶこと」。でもどれだけ考えてことばを置いても、どう届くかは十人十色です。今回は一回り以上年下のはじめましての学生のみなさんへ、それぞれの講義で100人以上にことばを届けるという初めての経験。

講義内での質問や講義後のコメントなど、いただいたことばからの学びが山ほどありましたが、今を生きるひとりとして、また患者家族、患者友人のひとりとしての想いを素直に綴ってくださっていたこともとても有難いことでした。

同時に「社会問題」という「影」の部分を削ってでも、患者の立場から支えられた家族や友人の存在、支えといった「光」の部分ももう少しお伝えできたらもっと良かったのかなという反省もあります。経験や立場の異なるもの同士でも交わせるもの。きっかけづくりのかたち。自分が感じてきた「光」の部分を都度届けることは、一層大切にしよう。そのことを改めて考えるきっかけをいただいた一日でした。

講義後、橋川先生が案内してくれたそーねOZONE内にあるソーネカフェさん。集合住宅に点在する空き室を改修した“分散型”のサービス付き高齢者向け住宅のある大曽根住宅の、1階にあったスーパー跡地を改装して生まれたそうです。カフェ・レストランやショップ、相談コーナー、イベントスペースがあり、平日の夜ながらも地域の方々がゆるやかに集われていました。

この場所のことも他の地域のことも、橋川先生の「地域福祉」というまなざしから教わるととても面白く、教養が運んでくれる豊かさのようなものを改めて感じるひとときでした。ご飯会には金城学院大学の他の先生や別の講義のゲストスピーカーさんも合流し、福祉の現場や教育の現場でみなさんが感じ考えていらっしゃることをたくさんお伺いできた夜となりました。

ZINEの活動もがん経験者としての活動も、本当にささやかに続けている範囲のものです。そんな活動に関心を寄せてくださり、地域の専門職の方々や大学の先生方がこうして声をかけくださり、一緒に何かを考えたり、一緒に何かをしたり。その一つひとつが当事者として有難く、心強く感じます。

そんなことを振り返りながら、時代にも縁にも恵まれているなとしみじみ感じた帰り道。これからも一緒にできることを積み重ねながら生きていきたいなと思います。

今回お世話になった金城学院大学の先生のみなさん、学生のみなさん、本当にありがとうございました。またどこかで、お会いできたらうれしいです。

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