2018-12-21

【Report】記憶のアトリエ in トコテコ紙芝居小屋

2018年12月15日(土)11:00-16:30まで、兵庫県宝塚市にあるトコテコ紙芝居小屋で 「記憶のアトリエ」 をひらきました。

春は静岡県富士市の幸ハウス、夏は富山県の音川にあるお家、秋は再び幸ハウス…。春夏秋冬それぞれに、主に病院などでがんを経験された方やご家族、ご友人のみなさまがゆっくりと過ごせる場としてひらいてきたmichi-siruveの「記憶のアトリエ」。

2018年冬のアトリエは、普段michi-siruveが暮らしている関西での初開催。「がん経験の有無に関わらず“大切な記憶”に触れ、綴じるひとときもお贈りできたらな」という想いから、宝塚の清荒神にあるトコテコ紙芝居小屋で、オーナーのみやざきけいこさんと一緒にひらくことになりました。

県内にある心療内科のクリニックで10年以上 、来院者のおはなしを聴くことを続けていらっしゃる心理カウンセラーでもあるけいこさん。

出会いは今から6年ほど前。わたしがまだがんになる前、Web制作会社に勤めるディレクターとして働いていた頃でした。宝塚のまちに拠点を置くクライアントさんの仕事を担当しながら、まちの小さな映画館で続いている宝塚映画祭のスタッフとしても宝塚に通っていた時、映画館のマルシェで紙芝居ユニット トコテコとして活動されている姿を見かけたのが最初の出会い。当時宝塚にあった写真表現大学の写真表現講座に1期違いで通っていたというつながりもあり、時々宝塚のまちで再会しては、少しずつ交流を深めていました。

その後わたしはがんになり、Web制作会社も映画祭のスタッフも辞め、宝塚から少し離れてしまったのですが。ZINE作家として活動をはじめたわたしが、がんの治療後に初めてひらいた企画展にもふわりとお越しくださり「蓮池の泥水のような記憶の池の奥底から、みちさんの手でことばを掬い上げると、綺麗な蓮の花が咲くのね」ということばをくださったり。ささやかな表現の奥にあるものを感じとるけいこさんのまなざしに、いつも気づきをもらう日々でした。

そんな風に、数年かけて何度か小さな再会を繰り返し、少しずつことばを交わしてあってきたけいこさんとなら「がん」ということばを外しても「病院」という空間を離れても、良い空間がつくれるのではないか。そんな想いで、今回トコテコ紙芝居小屋へお邪魔しました。

以前「記憶のアトリエ」の“記憶”についてという文章でも綴ったとおり、 「記憶のアトリエ」は、michi-siruveが「“大切な記憶”に触れ、綴じるひとときをお贈りしたい」という気持ちからはじめた、小さな移動アトリエです。

アトリエには、わたしが今まで預かってきた「誰かの大切な記憶」を綴じた小さな本や「ご自身の大切な記憶」を綴じることのできる本づくりの道具や素材が並んでいます。そしてそれらと一緒に、アトリエをひらく場所やお家の「大切な記憶」も、少し一緒に置いていただくようにお願いしています。

幸ハウスさんでは、壁一面に広がる本棚いっぱいに並ぶサポーターの方々から寄贈された本たち。音川では、そのお家で暮らすご家族の大切な記憶がいっぱい詰まったフォトブック。トコテコ紙芝居小屋でも、けいこさんの「大切な記憶」をお願いしました。

ご自宅にあるたくさんの本から記憶のアトリエのために選んでくださった、小さな木箱におさまる程度の本。『八木重吉 詩集』『モモ』『ひとりごと絵本』『空と樹と』『美しいもの』『みちくさ入門』… 下段には心を見つめるみちしるべになるような書籍も。 あれもこれも、読みたい本ばかりでした。

そして紙芝居小屋の木の下には、トコテコ紙芝居で普段読まれている紙芝居、トランクの上には絵本や昔の小さなおもちゃ。 「カウンセリングも、紙芝居も“おはなし”という共通点がある」「“おはなし”を聴く、読む、つくる、声に出して届ける…どの時間も好きで、“おはなし”のそばに居たい」というけいこさんらしい記憶が小屋の中に散りばめられて、小さなワクワクが見え隠れする空間に。そのもの一つひとつに触れることができなくても、そこに「在る」ことから感じとることができるものの豊かさを、改めて感じました。

けいこさんの提案で、奧の縁側スペースはゆっくり過ごすことができる空間に。手前の壁沿いに、michi-siruveが制作してきた手製本やがんの記憶を寄稿した雑誌など。大きな木の下にあたるお部屋の真ん中のテーブルには、本づくりの素材や道具を並べました。共にあるのは、使い込まれた木製家具やあたたかい敷物、虹色の灯がともるストーブ、植物たち。

場が整うと、机を囲んであたたかい飲み物を飲みながらちょっと一息。「記憶のアトリエ」では、静かな時間をお贈りできるように、一緒にひらいてくださる方と確認していることがいくつかあります。

その中でも一番大切にしているのが「お越しくださった方の中から生まれる→(矢印)を大切にする」ということ。お越しくださった方が自由に心地よく、安心して過ごしていただけるように、 迎える側からの→(矢印) は極力抑えつつ。わたしたちも自由に、心地良く過ごす時間にしたいですね。そんなことを確認しながら、わくわくしながらアトリエをひらきました。

寒い寒い冬の日の開催でしたが、オープンしてすぐに ひとり、ふたり…とお越しくださり、 MEEKさんのランチボックスをいただきながら「おいしいランチの時間」がスタート。けいこさんオススメのMEEKさんのお弁当。「美味しそう!」「美味しいねー」とみんなで頷きながらぱくぱくと食べ切り、うっかり写真を撮り忘れてしまいました。お越しくださった方が持ってきてくださった手づくりの梅ケーキだけ、ぱしゃりと1枚。これもとっても美味しかったです。

アトリエに流れた時間や交わしたことばは、あの場をともにしたみなさんとの記憶として心の中に留めますが……本づくりをされる方もいらっしゃれば、縁側でおはなしされている方、奥にある本を読んでくださる方も。ひとつ屋根の下、みなさんそれぞれにお過ごしくださっていました。

記憶のおすそわけとして、みなさんがつくられていた本のお写真だけ。 アトリエの様子として少しだけご覧ください。

みなさん、本づくりの動機はそれぞれ。小さな本に綴じられた押し花や紙片も、それぞれ別の町で暮らす方々からお贈りいただいた記憶の欠片です。

その欠片が「本をつくろう」と素材に触れた方の記憶と重なり、本に綴じられ、その人の掌の中へとおさまりアトリエから旅立ってゆく。手にとってくださった素材から、贈り主の方のおはなしにもなります。

「記憶のアトリエ」ということばに守られ、育まれ、大切な記憶を預り、手渡し、交わしてゆく空間が在る。そのことが、とても嬉しく感じました。

「記憶のアトリエ」は「大切な記憶に触れ、綴じる」ということばだけを置いた空間。お越しになる方々の経験や立場もそれぞれです。「はじめましての方が、小さな空間で気持ち良く共に過ごす」ということが成り立つのは、そこに集われたお一人おひとりが、お互いへの小さな思いやりを持ち寄ってお過ごしくださってこそ。

今回お越しくださったみなさんが笑顔で居て、笑顔で帰ってくださったのは、他の誰でもないみなさんのおかげさま。そしてトコテコ紙芝居小屋という心地の良い空間をひらいてくださったオーナーのけいこさんのおかげさまです。アトリエを終えて感じることは、いつもそれだけです。本当に有り難く、かけがえのないことだと感じています。

これが次回ひらいても、また思いやりのあるみなさんが集い、安心してお過ごしいただけるだろうか?という不安もまたいつも顔を出しますが。それ以上に、また来ていただけるように「続けたい 」という気持ちがあります。

それは、がん経験者のひとりとして「続けること」を大切にしたいという小さな想いがあるからです。生きている限り、続ける。生きている分、続ける。大きなことではなく、ささやかに。「そっと居る」ことを続けること。そして「そっと居られるひとときを贈る」ことを続けること。

そんな想いがあるので 「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 。来年もこの場所で、けいこさんと春夏秋冬続けてゆけたら…とおはなししています。2019年春は、お庭の桜が咲く季節に。4月の1~2週目あたりでしょうか。もしアトリエに行ってみたいなという方がいらっしゃれば、ご希望の日程とともに先にお知らせいただけたらなとも思います。

「記憶のアトリエ」 in 幸ハウスも、2019年春と秋の開催予定です。その他の場所でも、アトリエの想いに共感くださる方からのご依頼があれば伺います。

ご依頼方法については「記憶のアトリエ」リーフレットか、Webサイトの「ご依頼について」をご覧ください。

気持ちを寄せてくださるみなさんがいてこそ続けられる活動ですが、どうかこれからも見守っていただけると嬉しいです。来年も、その先も「記憶のアトリエ」をどうぞよろしくお願いいたします。

 

Visit Us On TwitterVisit Us On FacebookVisit Us On Instagram
Schedule

Event / Exhibition / WS
5/16-「小さなモノ展」@Open Village ノキシタ (宮城県仙台市)*5月いっぱい予定

6/11 *兵庫県内の大学にて講義予定
6/22「想いを見つめる」@がん哲学外来日和山カフェ(宮城県石巻市)
7/18 *愛知県内の大学にて講義予定
*兵庫県内の大学にてZINEワークショップ予定

記憶のアトリエ
3/31「記憶のアトリエ」in 街の保健室(埼玉県蕨市)
4/6「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)
6/8「記憶のアトリエ」in 幸ハウス (静岡県富士市)
7月末「記憶のアトリエ」in Open Villageノキシタ(宮城県仙台市)
8/17 「記憶のアトリエ」in 音川 (富山県富山市)
8/30,31 「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)
10/19「記憶のアトリエ」(大阪府大阪市)
「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)は秋、冬も1回ずつ開催予定です

関連記事