「記憶のアトリエ in 幸ハウス」(2018.5.27)
はじめまして。「記憶のアトリエ」という本づくりの移動アトリエをひらいている藤田理代と申します。
普段は大阪で、身近な素材や道具を使って自由につくるZINEの制作を通して、“
幸ハウスさんでは2018年5月形、春と秋の年2回アトリエをひらいています。わたし自身、4年前に29歳で絨毛がんを患い流産と手術、抗がん剤治療を経験しています。そしてがん患者の家族でもあり、遺族でもあります。
がんに罹患した5年前、同時期に祖母を亡くし“祖母が大切にしていた暮らしの品”と“そこに宿る家族の思い出”を綴じた本の展示をしたことから、本づくりを通して人の想いや記憶をつなぐきっかけづくりを続けています。
「記憶のアトリエ in 幸ハウス」(2018.5.27)
「あなたが“大切にしているもの”は何ですか?」
この1つの問いかけで、あなたの心に思い浮かぶものはありますか?最初は中々、すぐには思い浮かばないかもしれません。
思い浮かべるための道標に、私が今まで本に綴じてきた“大切な記憶”をご紹介すると……たとえばがんが判る直前にはじめて制作した『母のまなざし』(2013)は、母が長年撮りためていた家族写真に娘の“声”を添え、子育て30年の節目に母へと贈り返したZINE。 押入れに眠っていたアルバムにのこされた“大切な記憶”を綴じなおしたものです。
次に制作した『かぞくのことば』(2014)はがん闘病を支えてくれた家族から治療中にもらった言葉を一人一言ずつに写真を添え、寛解の節目に贈ったZINE。治療中は言葉にできなかった“患者の心の内”を、感謝の気持ちとして贈りました。
続いて制作した『otomo.』 (2014)は他界した祖母が大切にしていた“暮らしの品”を撮影し、そこに宿る“家族の思い出”を聴いて綴じたZINE。それが依頼主の“大切な記憶”を豆本におさめて贈る「掌の記憶」(2015)という活動へと広がっていきました。
昨年制作した豆本詩集『汀の虹』(2017)は、がんになってから3年間の“心の変化”を28篇の詩にしたチャリティーブック。どれも私が“大切にしているもの”を見つめなおすために本に綴じました。
「記憶のアトリエ in 幸ハウス」(2018.5.27)
そんなわたしのZINEを読んだ幸ハウスさんから「“大切にしているもの”」を本に綴じるワークショップのご依頼をいただきました。
「お越しくださったお一人ひとりが “大切にしているもの”を大切にする」という想いで運営されている幸ハウスさん。そのワークのひとつとして、アトリエにお越しくださったみなさんの“大切にしているもの”を本に綴じ、見つめなおし、交わしていきます。
「わたしが“大切にしているもの”って何だろう?」
「これから先、“大切にしたいもの”って何だろう?」
それを小さな本におさまる範囲で綴じながら、今の自分を見つめなおしたり、誰かと読み交わしたり。そんなきっかけになる本づくりができたらなと思っています。
「大切なもの」……それは「かたちのある何か」かもしれませんし、心の中にある想い…「ことば」かもしれません。たくさんあるかもしれませんし、たったひとつかもしれません。今はひとつも見つからないかもしれません。
みなさんが今自分を見つめて思い浮かんだものと、その時心に浮かんだ気持ちだけお持ちください。それがみなさんの「まなざし」と「声」になります。(「大切なもの」が見つからないな…という方は、自分の経験を振り返り、綴じていく流れの一例を紹介した連載の第5回「ZINEのつくりかた〜表現のみちしるべ篇」が参考になるかもしれません)
それでも、ワークショップまでに一つも思い浮かばなかったな…という時は、いつか大切なものが見つかった時におさめられるように、本の背景などの土台をつくる時間に。アトリエにあるたくさんの本やみなさんの制作の様子にも触れながら、一緒に考える時間にしましょう。
※「“大切にしているもの”を見つめるワークショップ」についてご質問などございましたら、幸ハウスさんへお問い合わせください。次回開催日などは、決まりましたらこちらでもお知らせいたします。