「大切」#掬することば

(この文章はnote「掬することば」からの転載です)

いよいよ今週末12/22(日)に開催する本づくりのワークショップ「20年の“大切”を綴じる」。

ワークショップを依頼された時、お越しくださった方々の記憶の呼び水になるような、誰かの20年が綴じられた手製本があったらいいな…と思いたち、秋頃友人に「見本の制作を一緒にしてくれる人はいませんか?」と、呼びかけてみました。

その呼びかけにメッセージをくれて、友人が綴じてくれた「20年の“大切”」。昨日遠く離れた町から届きました。20年…2000年からの20年間の記憶です。

届いた包みを開けるとふわっと薫りが広がり、若草色の外箱の中から記憶の宝箱が出てきました。わたしが秋に送ったのは、何もないまっしろな手製本。それがもう、世界に1冊の彩りと薫りとリズムが広がっていて、それに触れさせてもらう。こんなにしあわせな瞬間はないです。

手製本に詰まった“大切”は、その人の人生の足あとであり、生きてきた時代の文化であり、その人の心の中にのこる記憶であり、その過程で育まれたその人の感性でもあります。煌びやかなものだけではない、ご自身のとてもとても深いところにあるものにも触れ、そっと掬い上げて綴じてくださったのであろうこの手製本に胸いっぱいでした。

その過程も含めて大事にしてくれたことがとってもとってもとっても嬉しくて、この“時”を、そしてその“時”が詰まったずっとのこるものを、わたしは贈りたいのだなと。紙を集めては手製本を綴じ、あれこれトランクに詰めこんではあちこちでアトリエをひらきということを続けてる営みの原動力に、改めて気づくこともできました。

中身は、本当に大切な記憶なのでお見せできませんが、その輪郭だけほんの少し…本との“時”を、みなさんにもおすそわけします。

体調不良で制作が遅れ遅れになっていますが、わたしの「20年の“大切”」も綴じて、ワークショップ当日に一緒に並べます。わたしの“大切”は手帳の記憶。何年何月何日、誰とどんな1日を過ごしたのか。そんな大切な“時”の記憶を綴じたいと思っています。ワークショップが終わったら、それは友人に送ってお互いの20年を持ち合うことに…

友人が手製本に添えてくれたお手紙には「また次の20年を綴じる日が来るのであれば、ぜひまた……」と綴られていました。次の20年、そんな遠い彼方のことは誰にもわかりませんが、またお互いの“大切”を交換できる日が来たら、その時わたしたちは何を綴じ、何を感じるのでしょう。

手製本というささやかなものが、そんな心の交流の一つの術として、またその証として在ってくれたらいいな。そんなことをこれからも続けていきたいという力をもらいました。特大のありがとうの気持ちをこめて。

20years-zine02

※ワークショップ、まだいけるかも??もし今からでも参加したいという方がいらっしゃれば、主催のピピアめふさんへお問い合わせください。12/22(日)13時半~、兵庫県宝塚市のピピアめふさんでお待ちしています。
△ ワークショップの詳細
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たい‐せつ【大切】
1 もっとも必要であり、重んじられるさま。重要であるさま。
2 丁寧に扱って、大事にするさま。
3 急を要するさま。

デジタル大辞泉
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