「舞(まう)」の振り返り #掬することば

「舞(まう)」の振り返り #掬することば
毎年恒例の今から15年前、大学4年生のお正月から何となく続けている今年の一文字。
2025年は「舞(まう)」という一文字でした。
2006年からの一文字
それぞれの場所やお約束により持ち寄る種は異なりますが、大好きなたんぽぽの綿毛のようにふわふわと舞いながら、みなさんとの時間や対話を大切に積み重ねてゆけたらと思っています。
2025年はいろんな人たちと一緒になにかができたらうれしいな。そんなわくわくした願いを「舞(まう)」という一文字にこめました。
「舞」という一文字にそんな想いを綴ってはじまった2025年。
終えてみると、これまでのmichi-siruveの活動の道のりで出会った人たちとさまざまな場所で協働の機会をいただき、ともに舞った1年だったように思います。
さまざまな学問を専攻する大学生のみなさんと
– 講義・ZINEワークショップ –






2025年は5つの大学で、異なる学問を専攻する大学生のみなさんと学びの時間をご一緒することができました。
フェリス女学院大学 音楽学部 音楽芸術学科では「心と音楽」という講義で、緩和ケア医の儀賀理暁さんと。金城学院大学 人間科学部 コミュニティ福祉学科では、「現代社会問題」という講義で、大学時代の同級生でもある橋川健祐先生と。
東京家政大学 人文学部 心理カウンセリング学科では、五十嵐友里先生とゼミ生のみなさんと「記憶のアトリエ(ZINEワークショップ)」を。椙山女学園大学 人間関係学部では、森川和珠先生と「グリーフケア演習」を受講する学生のみなさんと「記憶のアトリエ(ZINEワークショップ)」。母校でもある関西学院大学 人間福祉学部 人間科学科では、藤井美和先生と藤井ゼミのみなさんと講義とミニアトリエ(ZINEワークショップ)を。
音楽、心理学、社会福祉学、死生学…学生のみなさんの学ばれている学問により内容を少しずつ変えながらですが、根底にあるのは、学生のみなさん一人ひとりが「わたし」をみつめたり、他者とわかちあうきっかけになるような時間を過ごしてもらえたらという想い。大学の講義の貴重な時間を委ねていただくことには毎回背筋がのびますが、学生のみなさんを想ってわたしにご依頼いただく先生方の想いも大切に受け取りながらそれぞれの時間を過ごし、その記録をレポートに綴ってお贈りしました。
さまざまな当事者、支援者のみなさんとのZINEづくり
– 記憶のアトリエ –



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ZINEづくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」は大学での開催に加えて、東京・兵庫・大阪でも縁のあった場所で。患者さん、ご家族、ご友人、医療や福祉の専門職、支援者など、それぞれの地域で多様なみなさんと一緒に開催することができました。
東京のアトリエは、NPO法人日本がんサバイバーシップネットワーク(がんサバネット)さん主催の会員限定交流会「お鍋のじかん」の催しのひとつとして。東京・港区立がん在宅緩和ケア支援センター「ういケアみなと」という地域にひらかれた場所で、がん患者さん、ご家族、医療者・支援者の方も含めてさまざまな体験をもつ方々が各地から集い、それぞれの「大切なもの」をZINEに綴じたり語り合ったりしながら過ごしました。
兵庫のアトリエは、兵庫県神戸市にあるチャイルド・ケモ・ハウスさんで開催された“病気のあるお子さんやそのごきょうだい、ご家族のみなさんのための場所”「よりみち」のプログラムとして。「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」の一環としてお子さんやそのごきょうだい、ご家族のみなさんが集い、ZINEをつくったり遊んだり、それぞれが思い思いに過ごす時間となりました。
そして大阪のアトリエは、2025年春からmichi-siruveがメンバーシップのお店番として関わっているふるえる書庫さんという約3万冊の蔵書がある、本に囲まれて静かに過ごすことができる場所で。コロナ禍以降約5年ぶりに、どんなお立場の方でも自由にお越しいただけるオープンなアトリエをひらくことができ、アトリエに関心を寄せてくださっていたみなさんと一緒に交流することができました。
それぞれのアトリエの様子はReportに綴っている通りですが、めまぐるしい日常から少し自由になって、それぞれの「大切なもの」をみつめたり、ZINEに綴じて交わしたり。michi-siruveにとって大切な時間であることを再認識できた機会となりました。
【がん体験談】
ーいえない(言えない・癒えない)といえる(言える・癒える)ー




毎年ご依頼いただいているがん体験談は、今年も医療者向けの学会や研修会、イベント、大学の講義などさまざまな場所でお話する機会をいただきました。
それぞれの場の目的やきいてくださるみなさんの立場や背景、講演時間により多少構成は変わりますが、どの体験談も患者としての「いえなかった」(言葉にして分かち合えないから癒えてゆかなかった)体験と「いえていった」(言えるようになり、癒えていった)体験についてのお話です。
NPO法人日本がんサバイバーシップネットワークさんの設立4周年記念フォーラム 「時代が回る その中で~時が癒してくれるもの、くれないもの」では「「いえなさ」が「いえてゆく」~罹患後11年という「時の経過」」を振り返って」というテーマで、罹患から11年の時の経過を7分間という時間できゅっとまとめて振り返るという機会をいただきました。
患者さんやご家族、市民のみなさんも参加されるフォーラムだからこそ、みなさんのお立場やお気持ちを想像しながら、いっそう一言ひとことを慎重に選びながらお話しました。
3年目となった日本臨床腫瘍学会主催の「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」では「わたしの「Cancer Journey」~患者が「いえる(言える・癒える)」助けとなる関わりとは~」、4年目となった「緩和ケア研修会」は「患者が「いえる(言える・癒える)」助けとなる関わりとは ~希少がんを経験した11年を振り返って~」。
どちらも研修会のプログラムの中での一コマとして担当するため、研修会全体の流れの中での役割を考えながら、参加者である医療者のみなさんの日常と重なるような内容を心がけています。基本的な内容は踏襲しつつも、過去の研修会でおききした参加者のみなさんの声をもとに、2025年のわたしだからこそお届けできる体験談をお渡ししてきました。
また、第20回医療の質・安全学会学術集会 シンポジウム 7「そのチーム、患者さんから見えていますか?~医療安全を促進するチーム医療への患者参加を考える~」では初めて、がん医療に限定しない学術集会で体験をお話する機会もいただきました。テーマとなる「医療安全」も「チーム医療」も「患者参加」もよくわからないという出発点。さらには、患者の立場で登壇するのはわたしだけで、聴き手のみなさんもほぼ医療者のみなさんという状況でしたが、この「よくわからない」という患者が抱える「不安」を手がかりに「患者が安心して“参加”できる助けとなる関わりとは ~20代の気象がん患者から見えた「チーム医療」~」というテーマで体験をお話しました。
「チーム医療」への「患者参加」という文脈で編みなおしてお話すると質疑応答で初めていただいた反応も多く、「がん」という領域からまた一つ広がった「医療」そしてそこで尽力されているみなさんの声をたくさん聴かせていただき、とても学びの多い登壇となりました。
立場をこえてともに見つめ、お互いの気持ちや考えを分かち合いながら「これから」をともに考え、つくってゆくきっかけとなるような役割を、これからもお声がけいただいた範囲で果たしてゆけたらと思っています。
さまざまな当事者、支援者のみなさんとのメディア制作



2025年はWeb制作やリニューアルのご依頼もたくさんいただきました。どの依頼主さんも、michi-siruveをはじめてから今日までともに年月を重ねてきた方々で、ささやかでも関わりが続いた先に、こうして改めてそれぞれの歩みを振り返りながら制作をともにできる喜びを味わいの制作となりました。まだ制作中のものもありますが、リリースされた中からmichi-siruve Webでもご紹介しているいくつかをここに記します。
2025年最初にリリースしたのは、大阪府柏原市で棟梁と和裁士の夫婦で営むHAUS(ハオス)さんのWebサイトリニューアル。9年前に「掌の記憶」の取材で和裁士yuccoさんの大切な記憶をお預かりした縁がこうして続いていることをうれしく思いながら、ご依頼くださった経緯も含めて丁寧にお話を伺い、仕事や暮らしや生き方への想いを掬い上げました。制作の過程で伺ったお話は「旅の記憶 – 柏原 –」「巻末 HAUSのおしごと」として「掌の記憶」としてもお贈りしました。
次にリリースしたのは、わたしもメンバーとして参加している、がん経験者“だからこそ”できることを模索し形にするソーシャルデザインプロジェクト「ダカラコソクリエイト」のWebサイトのリニューアル。
2019年に今のWebサイトの制作を担当し、2022年9月にはロゴのリニューアルに合わせてサイトのビジュアルやカラーなどを変更しましたが、制作から6年の節目にデザインリニューアルを行いましたが、セキュリティ面も含めて継続したメンテナンスが必要なのがWebサイト。発足からの10年で積み上げてきたもの、変化してきたものも伺いながら、ダカラコソクリエイトの「これまで」と「今」がより伝わりやすいように見せ方も少し変えました。
そして最後に、長い時間をかけて少しずつ形にした、病気療養中の子どもたちと関わる学生がつながり、ひろげる“学びのわ”「wacca!(わっか!)」のWebサイトもリリース。
「wacca!」は「全国の病気療養中の子どもたちが、いつでも、どこでも“学びの場”に集える社会の実現にむけて」という想いから、教育・医療・保育・心理などの「枠」を超えて、全国の学生がさまざまな形で交流し、子どもたちとのより良い”学びの場”をつくるためのヒントを一緒に考えている学生さんたちの活動。
michi-siruveは2023年と2024年に開催された第1回・第2回フォーラムの記録を残すために撮影やフォトレポートの作成を担当したご縁で、このつながり“学びのわ”をひろげてゆくためのWeb制作のご依頼をいただきました。リリース後もレポートの制作など、学生さんたちの活動を見守る大人のひとりとして、wacca!のわを広げるお手伝いを続けています。
ZINE『掬することば』 – 緩和ケア医の儀賀理暁さんと –



2025年は久しぶりに、患者としての想いや歩みといった「わたし」を振り返るZINEも制作することできました。
“いえないいたみ”を抱えたわたしが
緩和ケア医の儀賀理暁さんとみつめたことばたち
がん罹患から丸11年の節目に、2022/3/2~2025/5/4まで、緩和ケア医の儀賀理暁さんと交わしたメッセージから掬した72篇のことばの記憶を、3冊組のZINEに綴じました。
大半は儀賀さんと一緒に考えながら協働してきた大学での講義や展示に向けた打ち合わせや振り返りの会話ですが、わたしにとっては罹患から11年という月日とともに心の奥に押し込めてしまっていた、でも今日も「昨日のような今のこと」としてここにあるがん患者としての“いえないいたみ”の記憶をあらためて掬い上げ、語りなおす日々でもありました。
儀賀さんはきっと、ただ儀賀さんとして受けとりお返事をくださっていたのですが、その儀賀さんが「緩和ケア医でもある」という事実は、がん治療を受けていた当時「医療者に本音が言えなかった」という癒えない体験を持つわたしにとっては、とても大きなことであったのだとも思います。
このZINEができたことで、アトリエにお越しくださったみなさんや講義などでご一緒した学生のみなさんと想いを交わす機会も増え、ZINEを綴じ交わす過程で生まれるものの力も改めて感じています。これからもこのZINEとともに歩んでいきたいと思います。
ZINE『lead-off man』 – 14名の専門職とご家族と –



そして2025年末には、ZINE作家として大切に大切に制作の歩みをすすめてきたZINE『lead-off man』がかたちになりました。
0歳で希少がんを、それから15年の時を経て再び希少がんを患いながらも全力で駆け抜けた藤井大輝くんの「18年間、生きた証」を残したいというお母さまの由美さんからのご依頼で、18年を見守り支えた、14名の専門職とご家族の寄稿文で紡いだZINE。
ZINEは大輝くんの人生を見守り支えてくださった、医療・教育・その他さまざまな14名の専門職と、ご家族の寄稿文で構成されています。どの寄稿文も大輝くんのことを深く深く想って言葉を紡いでくださっていることが伝わってきて、レイアウト作成や製本をしながら、涙がとまりませんでした。
ZINE制作を通して、大輝くんと寄稿者のみなさんのことをたくさん教えていただき、襷を受けとった気持ちでいます。ZINEは寄稿者とご家族のみなさんの分だけ綴じたので20冊だけですが、寄稿者のみなさんからのご了承をいただき、大輝くんのことや病気療養中の子どもたちやご家族のことを想ってこのZINEを読みたいと思ってくださる方には、閲覧もいただけることになりました。
わたしもアトリエや講義の場、さらには子どもたちと関わる医療や教育の専門職の友人たちにも一人ずつ襷を渡すように手渡していて、これからも一緒に走り続けたいと思っています。
「舞」のその先へ
そんなこんなで、これまでのmichi-siruveの活動の道のりで出会った人たちとさまざまな場所で協働の機会をいただき、ともに舞い続けたような2025年。ちょっと頑張りすぎて年末からへばってしまい、振り返りがまとまるのが2026年春になってしまいましたが、こうして振り返るととても充実した1年を過ごさせていただいたなと感じています。
2026年も早速協働があったり、春以降のお約束もお声がけいただいているので、一つひとつ大切に重ねていきたいと思います。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
